自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏
今年は本格的な秋の訪れが遅いことで紅葉が進みませんでした。11月初旬になってやっと色づきました。すでに茶色く枯れるように散ってしまった葉も多いので、例年と比べてどことなく寂しい感じがあります。
富士山の初雪観測記録も例年比1ヶ月以上遅れでしたが、ある日5合目あたりまで真っ白に雪化粧していました。11月にこのような雪化粧は最近では見られなかったので、気持ちが昂りました。
気温が高めの時期が長かったので、11月半ばになってもなお秋のキノコが発生しています。胞子の成熟とともに傘が溶けるように黒い液状になるヒトヨタケ(一夜茸)やモミの林床にオレンジ色が鮮やかな彩りを添えているアカモミタケなどが見られます。腐朽が進んだ木杭からは小さなキノコがたくさん発生しています。センボンイチメガサという名のキノコです。チョコレートお菓子の形状を彷彿とさせるフォルムでかわいらしいです。
11月末には今シーズン初の霜柱が立派に伸びていました。そんな寒い朝、キイロスズメバチが寒さで動きが非常に悪くなって、ヨトヨタと歩いていました。刺される心配も少ないので、アップで写真を撮ることができました。
森は葉が落ち切って冬枯れとなり、遠く駿河湾も伊豆半島も見渡せる静かな季節が訪れました。
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5合目あたりまで雪に覆われた富士山が11月にみられるのは珍しい
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遅い紅葉・黄葉のシーズンが「まなびの森」にも
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青空に映えるオオモミジの紅葉
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例年より数が少ない林床のモミジの錦
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11月になっても発生したヒトヨタケ
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モミの林床のアカモ三タケ
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木杭から発生したセンボンイチメガサ
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朝の寒さで動きの悪くなっていたスズメバチ
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今季初めての霜柱(5㎝)
今年は季節がなかなか進みません。残暑の名残が10月になっても続いています。その証拠に紅葉しないので樹々の葉っぱがいつまでも緑のままです。
秋の花はそんな中で可愛らしく咲いています。「まなびの森」で秋の花と言えば、先月ご紹介したアケボノソウやシロヨメナのほかに、アズマレイジンソウとヤマトリカブトがあります。アズマレイジンソウの薄紫色、ヤマトリカブトの青色の花をそれぞれ横から眺めるとどちらも帽子や兜を被った人の横顔に見えるのがなんとも不思議でユーモラスです。
ブナの林床には薄黄色の小さなキノコがぽつりぽつりと生えてきます。1つ1つがブナの埋もれ実から生えています。ウスキブナノミタケ(薄黄橅の実茸)です。傘の付根の辺りがほんのりと赤みを帯びているのがなんとも愛らしいです。
林床に落ちている古い枯れ枝にキノコとしては珍しい青緑色のものが発生しています。チャワンタケの仲間のロクショウグサレキンモドキ(緑青腐れ菌もどき)です。枯れ枝を折ってみると、菌糸の色に枝が染まっているのが分かります。
シカの真新しい糞に群がっているのはフンコロガシとも呼ばれるオオセンチコガネの仲間です。コガネムシの仲間の甲虫で、メタリック紫に輝いていてとても美しいです。
樹の幹に人差し指の爪くらいの大きな脚の長いクモのような生き物がいます。クモに似ていますが、まったくの別の生き物でザトウムシの仲間です。8本ある長い脚の2本を触角のように探りながら歩き廻る姿が白杖をもった座頭のように見えることからついた名前です。このザトウムシは意外に素早い動きをして、大きな獲物を捕らえて食べます。自分の身体の倍ほどもある蛾の蛹をムシャムシャ食べながら歩いているのを見た時はビックリでした。
そして、寒暖差が大きくなり、10月終わりごろ忽然と白い柄に黒い頭の奇妙なキノコが出現しました。スッポンタケです。黒い頭の部分は粘液状の胞子で、それが異臭を放っています。その異臭でハエなどを誘い、胞子をほかの場所に拡散してもらおうという作戦をとっています。
最後になりましたが、喜ばしいビッグニュースがあります。「まなびの森」は健全な生態系を効果的に保全する国際目標である「30by30」達成のために環境省が推進する「自然共生サイト」に認定されました。これを機に「まなびの森」がより多くの皆さんに認知され、より多くの方に楽しみながら学んでいただける場を提供できるようにしたいです。
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今年はなかなか紅葉が進みません でも太陽の高度は下がっているので和かい日差しになっています
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アズマレイジンソウの可愛らしい花 ハチが吸蜜にきています
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ヤマトリカブトはアズマレイジンソウと同じキンポウゲ科の花 毒があることで有名!
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仲良く寄り添っているようなキノコ 名前は…?
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秋のブナの森の林床にはたくさん発生するウスキブナノミタケ
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ウスキブナノミタケの根元には2~3年前に埋もれたブナの実が必ずあります
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古い枯れ枝に発生したロクショウグサレキンモドキ キノコには珍しい青緑色です
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その枯れ枝を折ってみると青緑色の菌糸の広がりがハッキリとわかります
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フンコロガシとも称されるオオセンチコガネの仲間 直ぐそばに新鮮なシカの糞が…
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ザトウムシは「千と千尋の神隠し」の「窯爺」のモデルと言われています
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ザトウムシが自分より大きな蛾の蛹を抱えながら食べています
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スッポンタケ その頭部の黒い粘液状の胞子には異臭があります
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「自然共生サイト」認定証
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10月21日の認定証授与式
日が短くなり始めるとススキが穂を出し秋の訪れを教えてくれます。でも、今年は夏の猛暑が9月に持ち越され、真の秋をなかなか感じられませんでした。
とは言え、少しずつキノコの発生が目立ち、森の中でひと際人目を惹くのは真っ赤なタマゴタケです。今年見かけたものは傘の大きさが30㎝近くあり、とても立派なものでした。
白い花が沢山咲いています。リンドウの仲間のアケボノソウ(曙草)と言う花です。花弁の先の方に黒い斑点が沢山あります。これが明け方の空に消えて行こうとする星になぞらえての命名です。もう1つの特徴は花弁の真ん中あたりにある黄緑色の2つの点です。これがなんとアケボノソウの蜜腺なのです。小さなハチやハムシが吸蜜に集まってくるので、蜜腺であることが分かります。
初夏に美しい真っ白な花を咲かせたヤマシャクヤクは豆鞘のような実を炸裂させて、青い種を見せています。
サンショウの実は赤く色づき、早いものは赤い実の皮が割れて中の黒い種が見えています。
今年はアキアカネ(赤トンボ)も飛んでいましたが、それより一周り大きなヤンマが沢山フォレストアークの周りを飛んでいました。大型のオオルリボシヤンマが何匹も飛び廻っている光景はダイナミックで見ごたえがありました。
気温がいつもより高めながら、季節は少しずつ進んでいっています。
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ススキが穂を出すと秋の訪れを感じます
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晩夏~初秋に咲くアケボノソウはこう見えてリンドウ科の植物
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派手な色のキノコは毒キノコ いいえ、こちらは食用キノコの王様とも言われるタマゴタケ
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初夏に真っ白な花を咲かせたヤマシャクヤクの実 青色がきれいです
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チシオタケ(血潮茸) チョッと触るだけで名前の由来となった赤い汁(=血潮)が滲んでくる
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サンショウの実が赤く色づいています
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オオルリボシヤンマがフォレストアークの周りでたくさん見られました