まなびの森通信

まなびの森通信

自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏

【第252回】今年の6月の異変

2026年 6月30日

 今年は梅雨期になったとたんに台風が襲来すると言う異例な天候で、月末にもダブル台風の到来となりました。そして、気温がこの季節としては低めで、そのせいかいろいろ例年とは違うことが見受けらます。
 まず、ウツギです。例年であれば6月中旬に薫り高い白い花が咲くのですが、今年はようやく6月下旬頃に花を咲かせ、今では甘い薫りがあたりを包んでいます。
 また、モリアオガエルの鳴声は5月末から聞こえ始めたのですが、クリーム色の泡卵塊がいつまでも見られずヤキモキしていました。こちらも6月下旬になってやっとフォレストアークの周囲の側溝などに卵塊を産み付けました。
 「長老シナノキ」の近くのヒメシャラの根元にニホンミツバチの巣が新しくできたようで、盛んに出入りしています。蜜源から戻ってきたミツバチの後ろ足には花粉団子も付けています。ニホンミツバチは一般的なセイヨウミツバチよりひと廻り小柄で、性格も穏やかだと言われています。せっせと蜜と花粉と集めて巣に戻って来る姿はなんともけな気で見飽きません。
 梅雨の始まりにはサンショウバラがきれいなピンク色の大きな花をたくさん咲かせました。ただ少し残念なのは、きれいな花の命の短さ、儚さです。
 林床が生育の場であるクモキリソウがなにかの拍子で苔むした樹幹に移住しているのを見つけて早や4年ほどになります。その「キノボリクモキリソウ」とでも名付けたいクモキリソウが今年も見事に花を咲かせました。シカの食圧を逃れ、着実に毎年生育している姿はなんとなく微笑ましいです。これも富士山南麓の空中湿度の高さが生み出したものの一つでしょう。
 エゾハルゼミが鳴いている森は、その鳴き声が賑やかなため野鳥の啼き声をかき消してしまうほどです。そんなエゾハルゼミの羽化を目にすることができました。セミの羽化は夜中~夜明け前の時間帯が普通ですが、目にした個体は昼間午後2時ごろに羽化していました。時間にして30分ほどでしょうか。緑まじりの白い体、丸まった羽根が少しずつ伸びていく姿はなんとも神秘的です。
 「まなびの森」にもまもなく暑い夏が到来します。

  • サンショウバラが今年もたくさん咲きました きれいな花の命は短い

  • 直径10㎝もある大きなサンショウバラの花

  • ヒメシャラの幹の窪みにニホンミツバチが出入りしています

  • エゾハルゼミの羽化の瞬間

  • クリーム色がかった白のヤマボウシの花

  • 6月下旬になってやっとウツギの花が咲きました

  • 立枯れた樹から発生したシロキクラゲ

  • そのシロキクラゲと姿かたちが似ている黄色いハナビラダクリオキン

  • ホオノキの古い実から発生したホソツクシダケ

  • そのホソツクシダケに似ているがとても小さいブナホソツクシダケはブナの殻斗から発生

  • 寄生植物の1種のキヨスミウツボの花

  • 林床から樹上に住まいを移したクモキリソウは「キノボリクモキリソウ」と称しては如何?

【第251回】淡い緑の新緑は、すぐに濃い緑の深緑に変わります

2026年 5月31日

 今年の5月は夏のような暑いの日があったかと思えば、急に冷え込んだりと、気温の寒暖差が大きかった印象です。また、5月には珍しく大雨の日もあり、天候は不順気味でした。
 そんな中、「まなびの森」では、ブナを皮切りに、カエデ類が次々と若々しい新緑の葉を広げ、最後にケヤキが展葉するという順番で、森全体が淡い緑に覆われていきます。
 林床ではヤマシャクヤクが真っ白の玉のような蕾を膨らませ、ヤマクワガタやツルシロカネソウが白い花を咲かせ競い合っています。また、葉緑素を持たないギンリョウソウの半透明な白い花も見られます。全体は半透明な銀色ですが、花の中心部の雌しべは青色、それを取り巻く雄しべは黄色で、覗きこむように見ると美しさが増します。
 ゴマギも白い花を咲かせています。この木の葉を揉むと煎りゴマのような香ばしい匂いがします。ただ、人によってはゴムが焼けたような匂いと感じる場合もあります。臭いから連想する感じ方は色々で面白いです。
 この季節の花々は白色が圧倒的多数を占めていますが、ごくわずかに赤系のものが見られます。それはヤブウツギとサラサドウダンです。ヤブウツギはスイカズラの仲間で、花の付け根を吸うとほんのりと甘い蜜が味わえます。
 古い朽ちかけた切り株からブナの実生が芽生えていました。これにはビックリしました。去年は全国的にブナの実の凶作で、「まなびの森」も例外ではありませんでした。
 明るい林縁でホウチャクソウの花を見かけました。シカの大好物であるこの植物は「まなびの森」の中ではほとんど花を見ることがありません。この植物の名前の由来は花の形がお寺の屋根の4隅から吊り下げられている宝飾に似ているから、だそうです。
 森の中に変わった形のキノコが発生していました。キツネノロウソクです。胞子が熟すと白い卵の中にギュウっと折りたたまれたようなキノコ本体がにょきにょきと伸びてきて姿を見せます。一番先端部の黒緑色の部分はネバッとした粘液状で、その臭いは糞尿のようです。その臭いでハエなどの昆虫を引寄せ、命を繋いでいく胞子を散布してもらっています。
 こうして5月も終わりに近づくと、森は深い緑の夏色となっています。その頃に花を開くのが大きなホオノキです。白いホオノキの花びらの一片は15cmはあります。恐らく、日本の樹木の花の中で一番大きな花を咲かせているでしょう。
 そして季節はドンドンと夏に向かって進んでいきます。

  • 新緑の森はとても美しい

  • ヤマシャクヤクの真っ白な美しい花

  • ギンリョウソウはベニタケの仲間(キノコ)の菌根を経由して樹木から栄養をもらっている

  • サクラ類の中では一番遅く咲くタカネザクラ

  • ゴマギの白い花 葉っぱをもむと煎りゴマのような臭いがします

  • ヤブウツギの紅色の花

  • 赤のグラデーションがなんとも美しいサラサドウダン

  • ブナの実生 今年はとても珍しいシーンでした

  • ホウチャクソウの花 緑のグラデーションが美しいです

  • キツネノロウソクはとても変わった形ですが、キノコの仲間です

  • 森は5月末には夏の装いの深緑に

  • その頃に大きな花を咲かせるホオノキ

【第250回】早春からドンドン季節は進んでいきます

2026年 4月30日

 4月を迎えると森はいろいろな花で彩られるようになります。早春の妖精とも称される草花が多く、コガネネコノメソウ、ユリワサビ、ヤマエンゴサク、フデリンドウなどが次々とかわいらしく咲いています。
 そんな中、葉のない寄生植物のヤマウツボが花をつけています。地面からむっくりと薄紫色の太い茎にたくさんの小さな花がついている姿はなんとも不思議なようすです。
 3月初めに芽吹いたバイケイソウは元気にスクスクと育ち、まだ樹々が芽吹く前の明るい林床を独占しています。
 4月第一週が過ぎる頃にマメザクラが開花し、10日間ほどで満開を迎えました。毎年、かわいらしく咲くマメザクラに魅了されます。
 今年の4月は、雨が多く寒暖差の大きい天候が続きました。そのせいか、樹々の芽吹きが例年より少し早いように感じます。イタヤカエデの新芽は芽吹いてから数日は小さな"蛙手"のようですが、あっという間に展葉し立派な若葉へと育ちます。
 4月終わりになると雨水の溜まった溝でモリアオガエルが恋の相手を求めてケロロッ、ケロロッと可愛らしく啼いています。
 春から初夏へと季節は足早に進んでいきます。

  • 早春の草花の一つ、コガネネコノメソウ

  • バイケイソウがスクスクと育ってます

  • 雨上がりのコケの朔(胞子ができる部分)に水滴が残っていてなんとも美しいです

  • ユリワサビが満開に

  • バッコヤナギ(別名、ヤマネコヤナギ)の花

  • マメザクラが数輪やっと開花

  • 10日後にはマメザクラが満開に

  • ヤマエンゴサクの花

  • 早春の草花トリオのシンガリはフデリンドウ

  • ヤマウツボは寄生植物なので無葉です

  • イタヤカエデの若葉、カエデは“蛙手”

  • ミヤマハコベの花、一見花びらが10枚あるように見えるが、実は切れ込み深いハート形の 花びらが5枚

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