まなびの森通信

まなびの森通信

自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏

【第238回】百花繚乱が遅かった...

2025年 4月30日

 今年の春は3月に何度も雪が降ったことが原因なのでしょうか、春の花々の開花が遅かったです。平地のソメイヨシノが散ったころ「まなびの森」で咲き始めるマメザクラは4月中旬になってやっとほころび始め、満開になったのは4月下旬でした。
 ほかにも、例年春一番の花であるキバナノアマナ、フデリンドウ、アズマイチゲやネコノメソウの仲間も軒並み遅かったです。
 逆に、いつもは開花時期が4月上旬ころまでのミツマタは、3月の気温が低かったためか、4月下旬ごろまで咲いていました。
 ある日の朝、フォレストアークの玄関先で1匹のマルハナバチが弱々しくヨタヨタと歩いていました。寒さのために動けないのかと思い、手のひらに乗せ、ソッと息を吹きかけて温めてやっても特に変化はありません。命が尽きるのかと思い、せめて最期に蜜を吸わせてやろうと満開になったマメザクラに這いつかせてやりました。すると、すぐに吸蜜し始めました。そこで10秒ほど蜜を吸っていると、ブーンと次の花に向かっていくではありませんか。マルハナバチの余りにすばやい回復力に、花の蜜の持っているエネルギーに、あらためて驚かされた出来事でした。
 4月末には富士山の雪もかなり溶け、夏の雰囲気に衣替えしました。森が一番美しい新緑の季節もまもなくのことでしょう。

  • 今年のマメザクラは開花がだいぶ遅れました 大ぶりの濃いピンクと白い2本のマメザクラ

  • モクレンの仲間のコブシの花

  • 満開になったミツマタ 4月下旬になっても咲いています

  • 黄色い可憐な花を咲かせるキバナノアマナ

  • フデリンドウの開花も遅かった

  • アズマイチゲ

  • 名前が少しかわいそうなヨゴレネコノメソウ 開花している時、葉に白い斑点模様が見られ、それが汚れていると…

  • 4月末には富士山の雪もだいぶ溶けました (富士宮市役所最上階からの眺め)

  • マメザクラで吸蜜するマルハナバチ 実は…

【第237回】春はなかなか訪れず...

2025年 3月31日

 今年は3月になってもなかなか暖かくなりません。逆に、何度も雪が降りました。そのため、春告げ花や春の妖精(スプリング・エフェメラル)と呼ばれるキバナノアマナやアズマイチゲ、ニリンソウ、ヤマエンゴサクといった春を代表する草花が開花しないまま3月が終わろうとしています。
 雪が降る日があるかと思うと、次の数日は初夏のような気温の日があったりと、まるでジェットコースターのような気温の変化もありました。そんな不順な天候で植物のリズムが狂ってしまったのでしょう。日当たりの良いところにフキノトウが姿を現したのが3月半ば、ふだん春一番に咲くミツマタが咲いたのが3月の終わりといった感じでした。ミツマタはたくさんの花が小さなボール状に固まって咲くので、あたりは甘い香りに包まれます。
 春の雪は湿って重いので、降り積もる量が多いと木の枝が折れることがあります。雪が溶けたころに森を歩くと、たくさんの枝が落ちています。ほとんどが枯れ枝ですが、中には青々と葉をつけたウラジロモミが落ちていることもあります。新鮮な食べ物が乏しいために折れ落ちたウラジロモミの枝の樹皮をシカがかじり取っていました。シカはケヤキの根もかじっていました。よほど食べ物が乏しいのでしょう。
 毎年恒例の「企画懇談会」を3月19日に開催しました。フォレストアークにステークホルダーの皆さんをお招きし、直近の活動報告と各種の調査報告、新年度の活動計画を発表し、話し合う場として開催しています。今年も「まなびの森」の活動を安全に、円滑に運営していく上で、ステークホルダーの方々からいただいた貴重なご意見を活かしていきたいと考えております。

  • 3月初旬に今シーズン一番の10㎝ほどの降雪がありました

  • その後も何度か積雪があり、15㎝ほどまで

  • 森は乾燥していましたが、雪のお蔭げで苔も瑞々しい緑に

  • フォレストアークの水場近くに散乱していたヒヨドリと思われる羽根 水浴びに遣って来て猛禽類に襲われたのでしょう

  • 3月中旬になって日当たりの良い場所にフキノトウがようやく出現

  • やっと開花したミツマタの花

  • 雪の重みで折れたウラジロモミの樹皮が見事にかじられて

  • 太いケヤキの根の樹皮もかじられて

  • 企画懇談会で挨拶いただいた静岡大学 客員教授 増澤先生

【第236回】寒波の底に、2月はカチコチ...

2025年 2月28日

 今シーズンの冬は比較的暖かでしたが、立春の頃から連日寒い日が続きました。降雪は多くありませんでしたが、溶けた雪は寒さのためか屋根から40㎝近くもある長いツララをつくりました。軒下の地面から伸びている枝先にもツララができていました。
 フォレストアークの近くに置いてある水場も凍りついており、氷の表面に奇妙なクボミができていました。その水場を狙っているセンサーカメラで確認すると、なんとシカが氷を舐めているではありませんか。氷を舐めて水分補給をしたその結果、氷の表面にクボミができたわけです。
 植樹エリアの中には割と大きなヌタ場があり、動物や野鳥が沢山集まる人気スポットとなっています。そのヌタ場がそれまでより深く30㎝以上になっていました。そこにもセンサーカメラが設置してあります。動画をチェックするとイノシシが5頭もヌタ場でまるで「押し競まんじゅう」をするように泥浴びをしていました。たくさん集まったイノシシたちがブヒブヒブヒ…と、その結果としてヌタ場が深くなったようです。
 「まなびの森」では「日本野鳥の会」南富士支部に委託しているモニタリング調査の1つとしての鳥獣生息調査が年4回行われています。2000年から25年継続しているこの調査は2月で100回を迎えました。1月と2月は冬鳥の調査が主目的です。鳥の数は多くはありませんでしたが、ちょっと珍しい発見がありました。苔むした倒木の上にホオノキの実が1つ転がっていました。その周りにはホオノキの実の殻が散乱しています。想像するに、リスがホオノキの実を食べていたのでしょう。そして、第100回の鳥獣調査は17名の参加者の下、無事終えることができました。
 富士山の麓、富士宮の街中では梅が咲き始めましたが、「まなびの森」で一番早く咲くミツマタやオニシバリの蕾はまだ固いまま。開花はあと少し先でしょうが、季節は着実に春に向かって日も伸びています。

  • 積もった雪が溶けて40㎝近くもある長いツララが

  • 軒下の枝の先にもツララが出現

  • 水場は凍りついてまま その氷の表面に奇妙なクボミができています

  • 水場に集まってきたシカの群れ 氷を舐めて水分補給 その結果が氷表面のクボミ

  • 植樹エリアの中のヌタ場 深さが30㎝以上になりました

  • このヌタ場にはセンサーカメラが設置 そこに集まったイノシシの群れがひしめきあっまるで「押し競まんじゅう」状態に

  • 鳥獣調査の様子 2000年から25年継続 年4回なので今回で第100回目

  • 苔むした倒木の上に残されていたホオノキの実のリス食痕

  • 第100回の鳥獣調査を終えて「はい、チーズ!」

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