自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏
今年の夏は本当に暑いです。標高1,100~1,200m地点にあり、平地より7~8℃気温が低いはずの「まなびの森」でも蒸し暑い日が続きました。
そんな真夏の森ではあちらこちらで濃厚な甘い薫りが漂っています。初夏に咲くホオノキの花の薫りにも似たクサギの花が咲いているのです。クサギは漢字で書くと「臭木」。葉っぱを揉むと青臭い匂いが強いためについた少し不名誉な名前です。ただ、匂いの感じ方は人によって違います。この匂いからピーナッツバターを連想した人は「良い匂い」と表現します。葉っぱは青臭いですが、花はとても甘い薫りが強く30m以上離れたところでも薫ります。クサギは葉っぱも、花も匂いと言う個性がとても強い植物です。その強い個性にたくさんの夏のチョウたちが引き寄せられてきます。
少し明るい林床に、ヒョロンと長い茎の先に紫色の小さな花が咲いています。チダケサシと言う植物です。なにを「刺した」のか… チチタケと言う食用キノコを収穫した時、そのシッカリとした長い茎に刺して持ち帰ったと言うことからついた名前だそうです。
細いツルの先に緑色のボール状の蕾がついています。開花すると中は紫色です。キキョウの仲間でツルニンジンです。根が薬用の高麗人参に似ていることからついた名前ですが、ツルニンジンにも痰切りや滋養強壮の薬効があるそうです。また、地方によっては山菜として食用にもするそうです。
地面にちょっと変わった形のキノコが生えています。まるでサンゴのような形なのでホウキタケの仲間だと分かりますが、初めて出逢うキノコです。図鑑で調べてみると、シダレハナビタケの仲間だろうと思われます。シダレハナビタケはミズナラの倒木上に発生するらしいのですが、見つけたものは地面から。また、「枝垂れて」いません。インターネットで調べても、それらしいものにヒットせず… 今回は、その仲間と言うことにします。キノコはまだまだ未知の領域が多く、専門家による研究が待ち望まれる世界です。
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濃厚な甘い薫りを辺りに漂わせるクサギの花は真夏を代表する
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シッカリした長い茎(花径)が特徴的なチダケサシ
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チダケサシの小さな青紫の花
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ツルニンジンの花、外側は緑色だが内側は紫色
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ツルニンジンの花を下から覗くと
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まるで地上に生えたサンゴのようなシダレハナビタケの仲間
7月に入ると気温が高いせいもあるのでしょうか、ヒグラシが一斉に鳴きはじめました。初めは数が余り多くなく涼し気にカナカナカナァ~と、なんとも心地よかったです。それが日を追うごとに数が増えていき、森全体がカナカナカナァ~となってしまい、騒がしいほどになりました。辺りで聞こえるはずの野鳥の啼き声を完全にかき消してしまう勢いに、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」の諺どおりだなと痛感したしだいです。
今年もキバナノショウキランがあちらこちらで咲いていました。私が「まなびの森」に着任して6年目になりますが、一度も同じ場所で花を咲かせたことがなく、毎年予測不能な神出鬼没状態です。今年は咲きはじめた非常にフレッシュな花に出遭えたことが嬉しかったです。
今年は概ね気温が高めに推移しているため、草木の花は例年と比べて早めに咲く傾向にあります。が、中にはチョッと遅めに咲くものもあります。ヒメシャラは例年6月終わり~7月初めに咲きますが、今年は7月中旬になりました。サラサドウダンが花を咲かせなかったので、ヒメシャラよお前もか、と気を揉んでいた矢先の開花でした。
先月はコルリのバードストライクに出遭いましたが、今月はクロツグミが軽い脳震盪を起していました。
他にも、トレールの直ぐ隣の地面にスズメバチの巣が見つかりました。虫に詳しい方に調べてもらうとモンスズメバチだと分かり、周辺を立ち入り禁止にしました。ところが、数日後には巣の一部が地上に転がっていました。以前からの経験で、直ぐにスズメバチなどが大好物である猛禽類のハチクマが巣を襲いハチやハチの子を食べたのだと分かりました。
7月最後の土曜日に、社員家族などが参加しての環境学習天然林エコツアーを開催しました。今年は林学博士の西野文貴先生を講師役に招き、植物と植物の関係性から森を知る案内をしていただきました。
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無葉緑素の寄生植物キヨスミウツボの花
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ヒグラシの脱皮抜け殻
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ヒグラシの成虫
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菌従属栄養の無葉ラン キバナノショウキラン
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ヒメシャラの落花(花ガラ)
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ガラス窓にバードストライクして脳震盪を起しているクロツグミ
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モンスズメバチの成虫
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数日後に猛禽類のハチクマに襲われたモンスズメバチの巣
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森の中で話をする西野先生 「きこりん」も話を聴いています
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フォレストアーク内で午後の講義をする西野先生 サクラの葉を湯煎して「芳香水」作りました
毎年、5月末~6月初めに可愛らしい花を咲かせるサラサドウダンが今年は一輪も花を咲かせません。この「まなびの森」に赴任して6年目になりますが、こんなことは初めてです。
さらに、毎年秋に発生するハタケシメジやアカモミタケが6月に発生しました。今年は3月、4月が暑いくらいに気温が高く感じる日が多く、それに比べ5月は気温が低く感じる日が多かったので、キノコたちが秋になった勘違いしたのかもしれません。
そんな中、エゴノキやウツギの白い花が沢山咲き、あたりに甘い薫りを漂わせています。また、サンショウバラが大きなピンクの花をつけ、そこにマルハナバチなどが多く集まって蜜を吸っています。
モリアオガエルがヌタ場や小さな水溜まりを目ざとく見つけてはセッセと泡に包まれた卵塊を産み落としています。
ある日、建物の脇の地面でジッとして動かない青い小鳥がいました。ケガでもしているのかと心配になって近づいて良く見るとコルリでした。どうやら、ガラス窓にぶつかって軽い脳震盪を起したようです。しばらくすると、元気に飛び立っていきました。
林床に白いツバキのような花がボトリ、ボトリと落ちているので近くにヒコサンヒメシャラが花を咲かせているのは良くわかります。でも、高い位置に咲くので咲いている花を見ることはほとんどありません。たまたま、見廻していると手の届くところに一輪咲いていましたので、急いでパチリと写真に納めました。
今年の梅雨は雨の少なくカラ梅雨気味です。それでも、着実に夏に向かって季節は進んでいきます。
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エゴノキの花は下向きに沢山咲きます 蕾は紡錘形
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サンショウバラはフォッサマグナ地帯の代表的植物
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毎年、秋に発生するハタケシメジが6月に
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同じく秋のキノコ、アカモミタケが発生しました
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自然体験教室の子どもたちがガイドの話に聞き入ってます
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産卵を控えているモリアオガエル ※この写真は「まなびの森」とは別の場所で撮影
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「まなびの森」の小さな水場にモリアオガエルの泡卵塊が産み落とされてました
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ヌタ場の水際にアナグマの糞が…
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コルリがフォレストアークのガラス窓にぶつかって軽い脳震盪を起してしばらく動けません
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エゾハルゼミの1㎝ほどの小さな抜け殻
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地面に埋もれた古いホオノキの実から発生するホソツクシダケ
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タンナサワフタギの小さな白い花が満開に
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珍しく手の届く高さで開花したヒコサンヒメシャラの花