モニタリング活動

■まなびの森鳥獣生息調査

富士山「まなびの森」では、自然林回復活動を実施して以来、その回復状況をモニタリングするため、植生及び鳥獣生息の調査を行っています。

■2012年度調査結果

1.調査結果

小鳥の巣 2012年5月12日

小鳥の巣 2012年5月12日

       調査日の富士山 2013年2月11日

調査日の富士山 2013年2月11日


【繁殖期1回目・2012年5月12日(土)】
記録された野鳥の総数は26種94羽、テリトリーは7種19箇所、外来種2種であった。哺乳類はモグラ塚、タヌキの足跡、ニホンジカの糞や食痕が観察された。

【繁殖期2回目・2012年6月24日(日)】
記録された野鳥の総数は34種97羽、テリトリーは6種15箇所、外来種2種であった。哺乳類ではモグラ塚とニホンジカの糞や足跡が記録された。

【越冬期1回目・2013年1月12日(土)】
記録された野鳥の総数は23種95羽となった。哺乳類はモグラ塚とニホンジカの糞や食痕が記録された。

【越冬期2回目・2013年2月11日(月)】
記録された野鳥の総数は20種61羽であった。哺乳類はモグラ塚とキツネの糞が記録され、ニホンジカの糞や足跡や食痕も確認された。



2.野鳥の生息状況

2000年5月から開始し今年で13年目となったこの調査で生息状況に特徴のあった種について記す。

グラフ.1
ウグイス〔グラフ.1〕は、本調査開始の翌年である2001年より5-6月の調査では常に最優先種として記録されてきたが、しかしニホンジカの食害によるササの減少から繁殖地を失い2009年以降生息数・テリトリー数ともに減少傾向にある。2012年度には生息数で若干数を増やしたもののテリトリー数は5月-4箇所,6月-4箇所と前年並みで、数の復活傾向は感じられなかった。
グラフ.2
キビタキ〔グラフ.2〕は、かつては富士山南麓では生息数の少なかった種だが1990年代から少しずつ観察例が増えてきた。本調査でも開始当時から少しずつ数を増やしており、初夏の調査では大木の残る広葉樹林で毎年複数が記録されている。今年はテリトリー数が5月には確認できなかったものの6月には6箇所と昨年に続いて最多を記録した。
グラフ.3
コルリ〔グラフ.3〕は、例年5月の記録が6月を上回っている。昨年度は6月の記録が無かったが今年度は5月,6月ともに確認されている。小数ながら毎年渡来する夏鳥で、過去の記録では自然林と草原、または針葉樹林との境にテリトリーが多い。このような環境の多いこの地域で今後も安定した渡来数を維持できるかを注目しながら観察していきたい。
グラフ.4
モズ〔グラフ.4〕は、調査開始当時に草原だった地域が森林に姿を変えていく中で最も注目しながら観察を続けてきた種である。草原の森林化に伴い生息数も減少してきたが、今年度は3年ぶりに繁殖期・越冬期の両方で記録された。
グラフ.5
ベニマシコ〔グラフ.5〕は、冬鳥として渡来し、モズ同様に草原環境を好む種で、調査開始当初から予想していた草原の森林化に伴う生息数の減少が調査結果からはっきりと読み取れる。昨年度は2月に1羽の記録があったが、今年度は記録が無かった。
グラフ.6
外来種のソウシチョウとガビチョウ〔グラフ.6〕は、調査地では2001年にソウシチョウが、2002年にガビチョウが始めて観察されて以来徐々にその記録を増やし、2006年以降は毎年記録がある。この二種の増加が在来種の生息に影響を及ぼすのではないかという懸念があったが、現時点では明らかな影響は確認されていない。
グラフ.7
13年間に記録した野鳥の総個体数〔グラフ.7〕では全体を通じて個体数はゆるやかな減少傾向にあると言える。(2000年1月,2003年1月,2005年2月,2006年1月,2011年2月に全体から飛び出た記録があるのは、いずれもアトリの大きな群れが記録されたからである)

グラフ.8
グラフ.9
記録した野鳥の種数〔グラフ.8〕では目立った変化は見られないが、記録した野鳥の種数年度合計〔グラフ.9〕を見ると、2004年以降徐々に年間生息種数が減少している事がわかる。原因は草原性鳥類の減少かと思われたが、意外にもジュウイチ,マミジロ,ヤブサメ,マヒワなど森林性の野鳥が最近になって記録されていない事が集計表から分かった。
グラフ.10
まなびの森にテリトリーを持った鳥の種数とテリトリーの数〔グラフ.10〕を見ると、2002年から2005年にかけてピークが見られるが、これは台風被害にあった人工林が伐採され荒地となった場所に草原の環境が整った時期と一致する。この時期のまなびの森では森林性の鳥と草原性の鳥の両方にとって繁殖地としての環境が整っていたことを意味する。 グラフ.11
草原性の野鳥のテリトリー数〔グラフ.11〕を見ると2006年以降の草原性鳥類の繁殖活動の減少がよく分かる。特にモズは2004年以降繁殖期・越冬期共に生息の記録はあるもののテリトリーは9年連続で確認されていない。
今年度の調査では繁殖期と越冬期の記録を合わせると43種の野鳥と2種の外来種が記録された。



3.哺乳類の観察状況

【モグラ】(種不明)
4回の調査全てでモグラ塚やトンネルが観察された。
モグラ

【タヌキ】
夜行性が強いため日中にその姿を見る機会は少ないが、今年度は5月の調査で足跡が観察された。

【キツネ】
通年この場所に生息していると思われるが、その痕跡を見る機会は少ない。今年度の調査では2月に糞が観察された。

【ニホンジカ】
年間を通じて調査地に生息しているが、夏には標高の高いところへ移動する個体も多いらしく目にする糞の量も少なくなるが、冬季の調査ではほぼ全域で糞や足跡が記録されている。すべての調査で記録がある。


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