モニタリング活動

■まなびの森鳥獣生息調査

富士山「まなびの森」では、自然林回復活動を実施して以来、その回復状況をモニタリングするため、植生及び鳥獣生息の調査を行っています。

■2014年度調査結果

1.調査結果

【繁殖期1回目・2014年5月10日(土)】
記録された野鳥の総数は27種111羽、テリトリーは8種13箇所、外来種1種。哺乳類はイノシシとニホンジカの糞や食痕が観察された。
(調査員:渡辺修治,渡辺文子,坂東誠,田口浩行,影山秀雄,中根敏雄,中根由香里,菅谷勝芳)

【繁殖期2回目・2014年6月14日(土)】
記録された野鳥の総数は28種137羽、テリトリーは7種24箇所、外来種2種であった。哺乳類はニホンジカの糞や足跡が記録された。
(調査員:渡辺修治,渡辺文子,坂東誠,田口浩行,田口まさみ,中根敏雄, 中根由香里,影山秀雄)

【越冬期1回目・2015年1月10日(土)】
記録された野鳥の総数は27種160羽であった。哺乳類はモグラのモグラ塚の他に、ニホンリスの足跡とニホンジカの糞や食痕が記録された。
(調査員:渡辺修治,渡辺文子, 坂東誠,田口浩行,田口まさみ, 中根敏雄,中根由香里,影山秀雄,望月近美)

【越冬期2回目・2015年2月7日(土)】
記録された野鳥の総数は20種97羽であった。哺乳類は調査地全域で積雪の上にニホンジカの糞や足跡や食痕が確認された。
(調査員:坂東誠,田口浩行,田口まさみ,中根敏雄,中根由香里,影山秀雄)



2.野鳥の生息状況

2000年5月から開始したこの調査も今年で15年目となった。この調査期間の中で生息状況に特徴のあった種について記してみる。

グラフ.1
ウグイスグラフ.1は、調査開始当初より5,6月は常に最優先種として記録されてきたが、富士山全域に見られるササの減少から繁殖地を失ったと思われる。2010年以降生息数・テリトリー数ともに減少傾向にあり、最近の4年間はほぼ横ばい状態にある。テリトリー数は5月-5箇所,6月-6箇所。
グラフ.2
キビタキグラフ.2は、かつては富士山南麓ではごく限られた地域でしか姿を見る事ができず、過去にはまなびの森から少し下がった天照教林道が貴重な生息地だった。本査では開始当初から観察されている。グラフを見ると2008年から徐々に観察例が増えたのと同時に、5月より6月の方が数が多い傾向がはっきりしてきた。今年はテリトリー数が5月には確認できなかったものの6月には7箇所と過去最多を記録した。
グラフ.3
コルリグラフ.3は例年5月の記録が6月を上回る。2011年度は6月の記録が無かったが今年度も同様に5月のみ観察されている。2006年から2008年にかけて一時的な増加傾向が見られ生息数の増加が期待されたが、その後は大きな変化が見られていない。
グラフ.4
調査開始当初は草原だった地域が森林に姿を変えていく中で最も動向を注目してきた種がモズグラフ.4である。草原の森林化に伴い繁殖環境の減少から生息数が減少したことは予想通り、そしてグラフが示す通りである。フォレストアーク西方に広がる草原地帯はまだモズが生息できる環境を残していると思われるので、今後も少数が残ってくれることを期待する。
グラフ.5
冬鳥として渡来するベニマシコグラフ.5もモズ同様に草原性の種で、繁殖期・越冬期ともに低灌木がまばらに生えた草原を好む。特に調査開始当初から予想していた草原の森林化に伴う生息数の減少が調査結果からはっきり読み取れる。今年度は三年ぶりに1月の調査で1羽が観察された。
グラフ.6
外来種のソウシチョウとガビチョウグラフ.6は、調査地では2001年にソウシチョウが、2002年にガビチョウが始めて観察され、2003年以降は両種が毎年観察されてきた。その後2006年から2012年にかけて生息数を増やしていたが、ここ二年の調査では数が増えているという印象は受けない。
グラフ.7
15年間に記録した野鳥の年度ごとの総個体数グラフ.7は全体を通じてゆるやかな減少傾向ながら横ばい状態にある。環境が草原の多かった時代から森林化が進んだ結果草原性の鳥が減少し、代わりに森林性の鳥が増えた。自然環境が減少したわけではないので、今後もこの数字に大きな変化は起こらないと思われる。(2000年1月,2003年1月,2005年2月,2006年1月,2011年2月に全体から飛び出た記録があるのは、いずれもアトリの大きな群れが記録されたからである)

グラフ.8
記録した野鳥の種数グラフ.8を見ると、2001年と2003年の54種をピークに2004年以降徐々に減少している事がわかる。草原の減少に伴う草原性の鳥の減少の他にもジュウイチ、マミジロ、ヤブサメなどの記録が減っている。

まなびの森にテリトリーを持った鳥の種数とテリトリーの数グラフ.9を見ると、2002年から2005年にかけてピークが見られるが、これは調査エリアの中に草原の環境が整った時期と一致する。環境の単純化が生息する野鳥の種数を減少させる一因と思われる。

今年度の調査では繁殖期と越冬期の記録を合わせると43種の野鳥と2種の外来種が記録された。



3.哺乳類の観察状況

【モグラ】(種不明)
1月の調査でモグラ塚が観察された。
モグラ

【ニホンリス】
ニホンリスは雪が降ると足跡で生息が確認できるのだが、それ以外にはなかなか痕跡は発見しにくい。1月に姿が観察された。

【イノシシ】
近年生息の痕跡がめっきり減ったイノシシだが、5月と6月(調査地域外)でフンが観察された。
イノシシ

【ニホンジカ】
年間を通じて調査地に生息している。ほぼ全域で糞や足跡が記録されているが、夏は標高の高いところへ移動する個体も多いらしく痕跡は減少する。冬季は姿を見る機会も多い。
ニホンジカ

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