モニタリング活動

■まなびの森鳥獣生息調査

富士山「まなびの森」では、自然林回復活動を実施して以来、その回復状況をモニタリングするため、植生及び鳥獣生息の調査を行っています。

■2017年度調査結果

1.野鳥の生息状況

 まなびの森事業が開始された2年後の2000年から鳥獣生息調査は始まった。それから18年が経ち、この森で記録された鳥類は75種(その他に外来種4種)を数える。調査開始当時の調査地は台風被害にあった場所は倒木の切り株が撤去され土の見える環境が広がっていた。その後この土の上に草が生え、その草の中から自然に舞い降りた、または野鳥の糞によって撒かれた樹木の種子が発芽し、さらには植樹活動によって植えられた樹木が時を重ねるごとに成長し、森林へと姿を変えようとしている。環境の変化に伴い変化してきた鳥類の生息状況を特徴のある種について記してみる。

グラフ.1
 草原を主な生息地とするキジ〔グラフ.1〕は調査開始から7年間は繁殖期に複数が観察され、その後2011年まではテリトリーも記録されたが、それ以降は草原の森林化に伴い生息に適した環境が減少したため記録が減少している。地上を歩きながら餌を捕食する習性から、丈が低く餌となる実のなる植物が減少したことが生息数減少の原因と考えられる。

夏鳥のカッコウやホトトギス〔グラフ.2,3〕は採餌場所として草原に依存する習性があるため、草原環境が減少した2010年以降は個体数・テリトリーともに消滅している。
グラフ.2
グラフ.3
グラフ.4
 繁殖行動に草原環境が不可欠のモズ〔グラフ.4〕は、調査当初から環境の変化とともに生息状況の変化が予想されていた。地表が草で覆われ土の見えなくなった2004年以降テリトリーがなくなり生息数も減少した事から、かなりの確率で地面で餌を捕食する習性が想像できる。
グラフ.5
 富士山では夏に森林限界周辺で繁殖するカヤクグリ〔グラフ.5〕は、越冬期には標高の低い地域に移動する留鳥である。富士山麓では冬になると草原を見下ろす林縁の枯れ枝で観察される機会が多い。このような環境が残っていた2006年までは毎年冬になるとここに生息していたが、草原の中の樹木の樹高が高くなってきた2007年から数が減り、2012年以降この場所から姿を消した。
グラフ.6
 この調査で環境に変化があっても生息状況に大きな影響を受けなかった種がある。その代表がコルリ〔グラフ.6〕で、年ごとに若干の増減はあるものの生息数・テリトリー数ともに大きな変化がない。観察地点を記録した地図から、生息場所が1996年の台風以降も環境変化のない自然林に限られていた事が理由と思われる。

 調査を開始した2000年当時、まなびの森にはかなりの面積でササの生い茂る場所が点在していた。これはウグイス〔グラフ.7〕の営巣に最も適した環境である。さらに台風被害を受けた植林地の倒木が撤去されてできた広範囲な裸地が、その後草原になったことから生息適地がさらに増え、2003年から2010年にかけてはウグイスの生息数・テリトリー数ともにピークを迎える。その後シカの食害により富士山全域のササ藪が激減し、森林化によって草原環境が減少したことから2011年以降生息数とテリトリー数は減少し、その後は横ばい状態となっている。
グラフ.7
グラフ.8
 森林性の鳥の中には生息数を増やしている種もある。その代表がキビタキ〔グラフ.8〕で、2008年以降生息数・テリトリーともに増加傾向である。生息地はブナやカエデなど高木のある広々とした林で、調査地図によると植林地帯や草原地帯に隣接した自然林に新たに生息域を広げてきたことが特徴的である。
グラフ.9
 冬の調査で際立って数が増えたことを実感するヤマガラ〔グラフ.9〕。本来森林性の鳥であるが、調査初期の生息域と比較するとかつての草原が森林化された地域で記録が増えている事が分かった。草原の森林化によって生息数を増やした野鳥の一例と考えられる。
グラフ.10
 森林から草原まで多様な環境の中で観察例の多いホオジロ〔グラフ.10〕だが、まなびの森では年を追うごとに記録が減っている。この種も生息環境を草原にかなり依存していることがグラフからも分かる。2015年以降テリトリーも確認されなくなった。

 冬鳥のベニマシコ〔グラフ.11〕も草原環境を好む種である。そのため草原が森林化し始めたころから観察例が減り、グラフからはキジ,モズ,カヤクグリなどと同様の減少傾向を示している。
グラフ.11
グラフ.12
 外来種のソウシチョウとガビチョウ〔グラフ.12〕は、2001年にソウシチョウが、2002年にガビチョウが始めて観察され、2006年から2012年にかけて生息数を増やしてきた。2013年以降観察例が減少したが、ここ3年はガビチョウがソウシチョウを上回っている。
グラフ.13
 記録した野鳥の種数〔グラフ.13〕を見ると年度合計では2001年と2003年の54種を最高に徐々にその数を減らしている。2012年以降はキジ、モズ、ハシボソガラス、シロハラ、ジョウビタキ、カヤクグリ、ベニマシコ、シメなどが姿を消したことから、ピーク時より約10種減少の43種の年が続いている。2015年度から2016年度にかけて若干数が増えたが、今年度は41種という結果になった。森林環境はこれからも成長が続くが、ここに生息する野鳥の種数は、今後この数値あたりで落ち着くと思われる。
グラフ.14
 18年間に記録した野鳥の年度ごとの総個体数〔グラフ.14〕も、種数と同様に緩やかな減少傾向にある。
グラフ.15
 まなびの森にテリトリーを持った鳥の種数とテリトリーの数〔グラフ.15〕では2002年から2005年にかけてピークが見られるが、これ以降は減少傾向にある。草原の環境が減少し森林環境のみになってしまったことから繁殖する鳥の種数も限られてしまった。

 今年度の調査では繁殖期と越冬期の記録を合わせると41種の野鳥と2種の外来種が記録された。



2.哺乳類の観察状況

【モグラ】(種不明)
 1月の調査でモグラ塚が観察された。生体の観察ではないので、種は確認できなかった。
モグラ

【タヌキ】
 2月の調査で雪の上に残された特徴のある足跡が観察された。(写真-47)
タヌキ

【ニホンイタチ】
 特徴のある太さ1㎝未満のフンが5月に観察された。(写真-11)
ニホンイタチ

【ニホンジカ】
 年間を通じて調査地に生息している。ほぼ全域で糞や足跡が記録されているが、有害鳥獣駆除の影響か近年は痕跡が減少しているように感じる。(写真-12,23,36,48)
ニホンジカ

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