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自然関連課題に関する方針
ネイチャーポジティブステートメント
自然は、食料や飼料、エネルギー、薬品や遺伝資源、ならびに人々の身体的健康と文化の維持に欠かせない様々な資源を提供するという極めて重要な役割を担っています。しかし、森林減少、気候変動、土壌や水、大気の汚染など、複数の人為的な要因によって、自然が大きく改変され生物多様性が脅かされています。ネイチャーポジティブとは、「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる」ことを指し、2022年12月に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(CBD-COP15)や、G7 2030年自然協約などにおいてもその考え方が掲げられています。
住友林業は、2025年、当社としてのネイチャーポジティブに対するスタンスや思いを整理した「ネイチャーポジティブステートメント」を公表しました。
ネイチャーポジティブステートメント
- 住友林業は、「木を植え、森を育み、資源として活用し、使った分はまた植える。」という循環型で持続的な林業の考え方に基づいて、国内外で事業を行っています。
- 同時に、世界中で気候変動や自然の損失といった環境課題が深刻化し、地域社会や経済、人々の生活に直接的 ・ 間接的な影響を与えている状況に対し、事業と生物多様性の関係性について定量的な把握に努め、企業として課題の解決に貢献する責務を感じています。
- 住友林業グループは、2030 年までに自然の損失を止め、反転させるネイチャーポジティブに貢献するべく、森林 ・ 木材 ・ 建築 ・再エネのウッドサイクルを回していくことで目標の実現に取り組んでまいります。
このほかにも、当社は以下のとおり自然関連課題に関する方針などを定めています。
2006年度:国内社有林における「生物多様性保全に関する基本方針」を策定
2007年度:「木材調達理念・方針」を策定し、また、環境方針を改訂し生物多様性への配慮を追加
2012年度:当社グループの生物多様性への認識や姿勢を示す「生物多様性宣言」、社内的な指針を取り決めた「生物多様性行動指針」、具体的な行動目標を定めた「生物多様性長期目標」を制定
2015年度:それまでの「環境理念※」「環境方針」「生物多様性宣言」「生物多様性行動指針」を統合し、生物多様性への取り組みも「住友林業グループ環境方針」で統一された方針のもと運用開始
今後は、具体的な行動目標を示した「ネイチャーポジティブ目標」の策定に向けた検討を進めます。
※住友林業グループでは1994年に「環境理念」を、2000年に「環境方針」を策定
- 関連情報はこちら
ネイチャーポジティブ実現への社内体制
住友林業グループにおけるネイチャー関連、特に生物多様性保全に向けた取り組みは、環境マネジメント体制に則り、住友林業の代表取締役社長を責任者に、サステナビリティ推進担当執行役員及びサステナビリティ推進部長が、住友林業グループ各社の活動を決定・統括しています。
ネイチャー関連のリスク
住友林業グループは、国内社有林で計画的な森林経営を展開するほか、海外でも広大な植林地を管理し、生物多様性の保全や地域社会の発展に貢献するための活動を実施しています。国内外で所有・管理する山林・植林地では、大規模な山林火災や病害虫による植林木の損失、誤った伐採量の試算による過剰伐採、地域住民からの反発、環境保護団体からの批判活動が長期間続いた場合には、これらのリスクの顕在化が、当社グループの業績などに影響を与える可能性があります。
ネイチャーポジティブを目指した取り組み推進
住友林業グループは、保有・管理する森林で、植林・育林・伐採を計画的かつ継続的に実施する保続林業の考え方を基本に、持続可能な木材生産に努めています。適切な伐採時期を決め、施業計画の立案とこれに沿った森林経営を実施しています。
また、植林木の育成が阻害されないよう、下草等の刈払いや計画的な間伐などの植林事業地全体の日常的な管理を徹底しています。
さらに、保有・管理する森林を取り巻く地域社会への貢献に努め、地域社会の発展に寄与する事業を展開しています。特に大規模植林事業を展開するインドネシアやパプアニューギニアでは、地域の雇用創出、ライフライン設備の建設、環境教育などの活動を地道に展開し、地域に根ざした活動を目指しています。
ネイチャーポジティブに向けたモニタリング調査
上記に代表されるような取り組みを通じて、住友林業グループは、自然との共生を図るべく、自然の損失を止め、回復に転じさせるネイチャーポジティブの2030年実現に向けて取り組んでいます。2025年度には、各事業部門の関連する取り組みの結果を定量化するパイロットプロジェクトを開始しました。ネイチャーポジティブへの貢献を定量的に把握し、具体的な行動目標の策定の検討材料とするため、森林の生物多様性・水源涵養量の調査などに着手、推進中です。
これらの結果については、次期中期経営計画で設定するサステナビリティ編目標で「ネイチャーポジティブ目標」に織り込む計画です。
例えば、北海道紋別社有林では、森林の公益的機能の定量的な評価に取り組んでいます。ドローンによるリモートセンシングやAI解析技術、環境DNAなどの新技術を複合的に活用し、天然林での広葉樹樹種や炭素蓄積量の推定、人工林・天然林での維管束植物、真菌、節足動物、鳥類、中・大型哺乳類といった多分類群の生物多様性の推定を行います。また生物多様性に配慮した施業(再生林業・保持林業など)についてもその方法論の検証を行います。水源涵養機能についても同様に、モデル推定と実測モニタリングを組合せ、森林の多面的な価値を見える化しています。
主なモニタリング調査プロジェクトと有識者などとの連携
| 事業 | 調査対象 | 対象地 | 有識者連携先 |
|---|---|---|---|
| 森林 | (生物多様性)植物・ほ乳類モニタリング | インドネシア・西カリマンタン | 株式会社バイオーム |
| (生物多様性)鳥獣類の生息状況モニタリング | 日本・日向社有林 | 株式会社地域環境計画 | |
| (生物多様性)植物・動物モニタリング | 日本・紋別社有林 | 東京大学 | |
| (水資源)水量・水質モニタリング | 日本・紋別社有林 | 東京大学 | |
| (炭素)広葉樹の樹種判別と炭素広域評価 | 日本・紋別社有林 | 東京大学 | |
| 製造・建築 | 調達地におけるコミュニティ支援の効果 | インドネシア・東ジャワ | 東京大学 |
| トラス・パネル製造事業の木材使用量の削減 | 米国 | 当社調査 | |
| 木材製造・建築の環境負荷の評価・削減 | 日本 | 早稲田大学 | |
| 都市の緑化 | 国内住宅緑化の生物モニタリング | 日本 | 株式会社バイオーム |
| 米国・土地開発事業における生態系モニタリング | 米国 | Nature metrics社 | |
| 全事業 | 当社全事業の水使用量の調査と削減 | 全事業地 | 当社調査 |
自動撮影カメラで撮影されたキタキツネ(紋別社有林における植物・動物モニタリング)
自動撮影カメラで撮影されたエゾユキウサギ(紋別社有林における植物・動物モニタリング)
河川水源涵養調査(紋別社有林における水量・水質モニタリング)
ミティゲーション・ヒエラルキーと事業取り組みの関連
これらの住友林業グループの取り組みを、SBT for Natureが推奨するネイチャーポジティブ実現に向けた行動のフレームワークに則って、次のとおり整理しました。事業の取り組みをミティゲーション・ヒエラルキーに照らしあわせて整理することで、インパクトを最小限にしています。
出典:Science based targets network,2020.「自然に関する科学に基づく目標設定 企業のための初期ガイダンスエグゼクティブサマリー」
| 基本的な考え方 | 主な取り組みの記載場所 | |
|---|---|---|
| 回避 | 「住友林業グループ調達方針」や「木材調達管理規定」を策定、それに適合した持続可能な木材及び木材製品のみを調達し、問題ある木材及び木材製品の利用を回避しています。また、森林事業においては、木材生産のための「経済林」と環境保全を重視する「環境林」に区分して管理し、生物多様性を保全すべきエリアでの施業を回避しています。国内社有林において、多様な生物が生息する水辺では、「水辺林管理マニュアル」を作成し、施業を制限しています | |
| 軽減 | 木材の循環利用を促進することで資源消費の減少と効率化を進め、サーキュラーバイオエコノミーの実現を目指すとともに、自然への負荷の軽減に努めています。また、森林事業においては、生物多様性保全を含む森林の公益的機能を保ちながら木材資源を永続的に利用するため、適正な管理のもと、持続可能な森林経営を進めています | |
| 復元・再生 | 損失もしくはその恐れのある生物多様性を復元・再生する活動を、都市や住宅における緑化事業などの本業と事業活動を通じて培った経営資源を活かす社会貢献活動の両面で実施しています | |
| 変革 | Natureや生物多様性に関する国内外のルールメーキングや業界団体・関連団体の活動に参画して意見発信するとともに、NGOなどの活動を支援しています |
保護地域などに関するコミットメント
住友林業グループは、木材資源を生産、確保するために、国内外で多くの森林を所有・管理しています。これらの森林は、世界自然遺産エリアに指定された地域ではなく、また、世界自然遺産に指定されたエリアでの施業は今後も行いません。
国土が狭い日本の国立公園は、土地の所有に関わらず指定を行う「地域制自然公園制度」を採用しており、国立公園内にも多くの私有地が含まれています。住友林業の社有林も、一部、国立公園に含まれるエリアがありますが、その生態学的な重要性を認識したうえで、その他の保安林等に指定されている地域とともに、法令を遵守した施業を行っています。
また、リスクアセスメントのうえで、生物多様性の観点から重要と判断された地域においては、法令遵守にとどまらず、活動の見直し、最小化、回復、及びオフセットなど、影響の緩和に努めています。
住友林業グループでは、国内に約4.8万ヘクタールの社有林を、海外では約23.1万ヘクタールの森林を管理しています。また、森林ファンドによって約9.4万ヘクタールの森林を管理しています。これらの管理森林を「保護林」「経済林」などに区分し、国内外とも、「保護林」においては自然保護のために原則的に施業を行わないこととしています。
森林の目的に応じたゾーニング管理
行政によって決められた事業地の境界は、生態系の境界と一致するとは限りません。インドネシアの子会社ワナ・スブル・レスタリ(WSL)、マヤンカラ・ タナマン・インダストリ(MTI)及びクブ・ ムリア・ フォレストリ(KMF)では、政府管理下の隣接する保全林を含めた徹底した動植物調査のうえ、保護すべきエリアと活用すべきエリアを設定しています。オランウータンやテングザルといった希少な動物の生息地が島状に取り残されないよう、隣接する企業とも相談し、グリーンコリドーを網の目状に設定するコンサベーションネットワークを構築しています。
インドネシアの森林管理エリア
コンサベーションネットワーク
関係者による取り組みの評価
WSL・MTIが提唱したコンサベーションネットワークの概念と具体的な取り組みは、世界的にも稀有な取り組みとして国内外で注目されています。2019年にスペインのマドリードで開催された国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)では、インドネシアパビリオンにて民間企業代表として発表し、国際機関代表、研究者、NGOから高く評価されました。2022年にエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されたCOP27及び2023年にアラブ首長国連邦のドバイで開催されたCOP28においても、熱帯森林を取り巻く課題に対する技術的アプローチや当社の取り組みを紹介しました。2024年には、コロンビアのカリで開催された生物多様性条約第16回締約国会議(CBD-COP16)において、景観レベルの生物多様性保全の重要性について強調しました。
また、都市の緑化事業においては、発注いただいたお客様に一般社団法人いきもの共生事業推進協議会(ABINC)が推進するいきもの共生事業所®や公益財団法人都市緑化機構が推進するSEGES緑の認定への認定登録を積極的に働きかけ、第三者認証を通じた緑化取り組みの品質向上に努めています。
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