生物多様性の保全

緑化による環境都市への貢献

基本的な考え方

自然共生を目指す社会的な動きの中で、都市再開発やまちづくりなどにおいても地域に根ざした植物をできるだけ活用していこうとする動きが広がってきています。

このような動きの中、これまで住友林業緑化では、自然再生を目指す緑化計画においては郷土種、在来種の採用が好ましいとの考え方のもと緑化対象地に応じた樹種選定の指針を「ハーモニックプランツ®」として定義し、その普及に努めてきました。

樹木には、日本に古くから自生している植物(自生植物)と、外国から入ってきた植物(移入植物)があります。移入植物の中には、その特質により自生植物の生息する場所を奪い、地域の生物多様性を脅かすような種(侵略植物)もあります。

植栽計画においては、保全レベルを考慮した4つのエリア(保護エリア、保全エリア、里山エリア、街区エリア)に分け、これに応じて植物種を選択します。例えば、住宅の庭づくりを行う「街区エリア」では、「園芸品種を含む自生植物」を主体に「侵略性のない移入植物」からも緑化植物をバランスよく選択することで「彩り」を演出しています。さらに地域の生態系への悪影響が明らかな侵略植物を使用しない方針を立て、同社の技術統括部署において、その使用の有無をチェックしています。

※ 外来生物法に規定されている特定外来生物及び生態系被害防止外来種

植栽エリアについての考え方

植栽エリアについての考え方

まちづくりへの貢献

ABINC認証取得「フォレストガーデン秦野」

住友林業のまちづくり事業では、注文住宅事業や緑化事業で蓄積した技術ノウハウを基に、良質な戸建分譲住宅を年間約350棟規模で提供しています。「持続可能で豊かな社会の実現」を目指し、自然を活かした長く住み続けられるまちづくりを行っています。

神奈川県秦野市の戸建住宅団地「フォレストガーデン秦野」が2018年、戸建住宅団地・街区版部門での認証第1号となる、いきもの共生事業所認証(ABINC認証)を取得しました。 ABINC認証制度は自然と人との共生を企業に促すため、生物多様性保全の取り組み成果を認証する制度です。2014年からオフィスビルと商業施設を対象に認証を開始。その後、集合住宅や工場へと対象を拡充しています。

「フォレストガーデン秦野」の街並みのコンセプトは「生きものと共生できる緑のまちづくり」です。自生種をはじめ「ハーモニックプランツ®」の手法により質の高い緑を実現しています。湧き水を活かした持続可能な水循環への配慮などが認証の決め手となりました。

「フォレストガーデン秦野」の街並み

「フォレストガーデン秦野」の街並み

自然と和の美しさを感じる高層階の日本庭園

2020年、東京都八重洲・八丁堀地区に「ホテル八重の翠(みどり)東京」が開業しました。「日本の美しさを重ねる」をコンセプトに、都心のビジネス街にいながら非日常感と日本らしい上質な安らぎをお客様に味わっていただけるよう、最上階に日本庭園を設置、鹿威しや水盤等をしつらえた水景を中心に、四季の移り変わりを感じられる木々に囲まれ、自然と日本文化の美しさを五感で感じられる空間づくりを目指しました。

この空間の実現にあたっては、樹木を地上と地中の二重の支柱で固定するなど、高層階ならではの荷重制限を考慮した綿密な設計・施工の工夫に加え、自生種の植栽にこだわるなど、随所に住友林業緑化の経験と技術が活かされています。

高層階の日本庭園 高層階の日本庭園

高層階の日本庭園

UR都市機構 常盤平団地SEGES「そだてる緑」で初認定

UR都市機構常盤平団地の緑地がSEGES(社会・環境貢献緑地評価システム)(主催:公益財団法人都市緑化機構)の社会、環境に貢献する緑地を評価する「そだてる緑」部門Excellent Stage 2の認定を取得しました。住空間の緑としては 第一号の認定です。

独立行政法人都市再生機構(「UR都市機構」)と住友林業は、2020年8月に「環境認証制度を用いた居住系屋外空間の有効活用に関する研究協定」を締結し、団地の屋外空間の有効活用について研究を進めています。2021年4月、常盤平団地の緑地がSEGES「そだてる緑」部門 Excellent Stage 2の認定を取得するにいたりました。

UR都市機構と住友林業はSEGESの評価を活用し、長い年月を経て育まれ、地域の自然資産となっている豊かな緑地の利活用方法について研究しています。

研究成果を活用し、団地居住者等の地域の活動やコミュニケーションを促すことで、多様な世代が活き活きと安心して暮らし続けられる、自然と共生するまちづくりの実現を目指します。

全国都市緑化北海道フェアで国土交通大臣賞を受賞

2022年実施の第39回全国都市緑化北海道フェア内で開催された庭園出展コンテストで、住友林業が出展し、住友林業緑化がデザイン監修をした作品、「森の心地よさと暮らすグランピングガーデン」が最高賞となる国土交通大臣賞と金賞をW受賞しました。

受賞した作品は、空間のデザイン力や木材・植物を活かす高い技術力が評価されました。軸組フレームの柱と梁に北海道産トドマツを活用しているほか、主要な樹木は鉄道輸送するなど、地産地消や脱炭素で地域社会と環境へも配慮した作品となっています。特に樹木の鉄道輸送はトラックでの輸送に比べCO2排出量を約80%削減しました。このような環境負荷の小さい輸送方法への転換であるモーダルシフトは、脱炭素社会の実現のみならず、ドライバーの人材不足問題など、様々な社会課題への対応策としても期待されています。

写真キャプション 受賞作品

受賞作品

住まいのまちなみコンクールで施工物件が「国土交通大臣賞」を受賞

2020年に開催された第16回「住まいのまちなみコンクール」で、住友林業緑化で施工した、「フォレストガーデン秦野」と「クイーンフォレスト流山 おおたかの森」が「国土交通大臣賞」と「住まいのまちなみ賞」をそれぞれ受賞しました。

「住まいのまちなみコンクール」は、一般財団法人住宅生産振興財団が主催している、居住者を含めた地域の方々の維持管理の努力によって良好なまちなみが形成されている地区・団体を支援することを目的としたコンクールです。今回のコンクールでは、多数の応募の中から、国土交通大臣賞1点と、住まいのまちなみ賞4点が受賞をし、 内2点を住友林業緑化施工物件が受賞しました。

住友林業緑化の地域の特性を活かした魅力的なまちづくりが寄与した結果と言えます。引き続き、「街の総合プロデュース」を達成すべく、事業の拡大に取り組んでいきます。

※ いずれも自治会及び管理組合が応募したものであり、住友林業緑化が直接受賞したわけではありません

生物多様性保全の啓発

「住まいの樹木図鑑 改訂Ⅱ版」を刊行

住友林業緑化が発行した「住まいの樹木図鑑」は、2013年の初版より2回の改訂を経て累計46,000部を刊行しました。
改訂Ⅰ版は、環境省及び農林水産省による「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(生態系被害防止外来種リスト)」の制定を受け、生態系に係るさらなる影響も勘案し、住友林業緑化独自の外来種に対する基準を再構築したうえで、2017年3月に刊行しました。
改訂Ⅱ版は、種苗法改正及びオリジナル品種の追加を受け一部内容を改訂し
2021年3月に刊行、掲載樹種はオリジナル品種6種含んだ508種であり、主な改訂箇所は以下の通りです。

① 種苗法改正を受けた記載事項の見直し
種苗法の改正に伴い、登録品種の表示義務が発生することから、図鑑に掲載しているオリジナル販売樹木及び品種登録樹木に「品種登録番号」等を追加しました。

② SDGs(持続可能な開発目標)対する取り組みを追記
住友林業緑化では持続可能性に配慮した「ハーモニックプランツ®」の考え方を通じて、生物多様性の豊かさを守ること、「緑の力」を活かした家づくり・まちづくりを行い、心地よさ、楽しさ、美しさを社会に創出することなど、緑の事業を通じたSDGsに適う取り組みを実施しています。今回の改訂でこれらの取り組みを追記しました。

住まいの樹木図鑑 改訂Ⅱ版表紙

環境配慮への貢献を評価

住友林業緑化では脱炭素社会に向けた取り組みとして、住まいの庭の樹木による炭素固定の評価を始めています。樹木は生長する過程でCO2を吸収し、炭素として固定し続けることができるため、脱炭素社会に向けて重要な役割を担っています。
住友林業緑化の指針である「ハーモニックプランツ®」と組み合わせ、地域の生物多様性に配慮しつつ、地球全体の環境にも目を向けた庭づくりを目指していきます。
住友林業の米子展示場では、「ハーモニックプランツ®」の指針に則り、自生種を中心に配植しました。また、LCCM住宅のモデルケースであることから、庭づくりにおける炭素固定についても評価を実施しました。
庭づくりでの炭素固定が可能な素材として、樹木・ウッドデッキ・ウッドフェンスについて、その固定量を計算しました。米子展示場の庭では、CO2換算で約6.2トンもの二酸化炭素を固定しています(人工林における40年生杉の約21本分の炭素固定量に相当)。
今後はより簡易に評価できるようにシステム整備を進めるほか、適切に管理された樹木が生長していくにつれて増加していく固定量についても、評価できるよう準備を進めます。

写真キャプション 米子展示場

米子展示場

海外緑化事業

豪州でランドスケープ事業に進出

2022年、住友林業は豪州でランドスケープ事業を展開するRegal Innovations を子会社化しました。都市シドニーの代表的な開発・建設事業にも携わっており、商業エリア・公共施設の外構、緑地帯・公園の設計・施工等において自然と調和する景観創出を通じて環境課題への取り組みを加速させます。空間づくりの際は植物、木材、石材、土壌の活用だけでなく、雨水の循環や植生の回復・保存の技術も取り入れています。また、住友林業緑化による植栽施工や緑地管理のノウハウの共有、ランドスケープ設計の意匠提案など日本と豪州の技術交流も始まっています。今後は、当社が展開する住宅・建築・不動産事業と組み合わせ、豪州をはじめとする海外においてより環境に配慮した開発を推進していきます。

※住宅地や都市・インフラ開発における外構工事など、景観整備に関する事業を総称してランドスケープ事業と呼称

シドニーのバランガルー地区公園エリア

再開発が進むダーリングハーバー地区

豪州の分譲地での設計協業

豪州のメルボルン市北部で住友林業とNTT都市開発株式会社が共同で宅地開発を行うAnnadale分譲地(総販売区画数1,087区画)にて、住友林業グループのノウハウを活かし、現地ランドスケープ設計会社Tractと設計協業を行いました。

2017年から始まった設計協業において、住友林業グループはTract作成の基本設計案に対し「Growing Wellness Life&The Five Sense(健康的な暮らしと五感の育み)」というコンセプトを提案しました。Tractより、「豪州では通常設計企画にストーリー性を持たせることは少ないため、非常に参考になる」と高い評価を受け、子どもの運動機能を発達させる自然石や丸太を使った遊具、植栽計画が実施設計に採用されました。引き続き実施された 2期の公園計画においても住友林業グループから基本コンセプトを提案し、その案を基に基本設計が行われ、2020年11月に完成しました。また、2021年にはシドニーの地方自治体の公共公園計画においてコンセプト提案や作図業務の協業などにも取り組みました。

豪州において緑地は、宅地開発の価値を高めるためになくてはならないものであり、緑あふれる魅力的なオープンスペースの創造が求められています。住友林業グループの海外緑化事業の取り組みはまだ始まったばかりですが、海外のお客様や住民に愛される美しく快適な空間創造を目指し、これからも事業化を進めます。

(左)Annadale分譲地2期公園コンセプト提案

Annadale分譲地2期公園コンセプト提案

(右)完成写真

完成写真

自然石を使ったNature Play(自然遊び)道具(Annadale分譲地1期公園)

自然石を使ったNature Play(自然遊び)道具(Annadale分譲地1期公園)