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STORY vol.4
木製のクルマ。

トヨタ自動車株式会社 辻賢治 様

トヨタ自動車株式会社 辻賢治 様

2016年のミラノデザインウィークに出展されたコンセプトカーSETSUNA(セツナ)。ボディやパネルなどが木製でつくられていること、そして、月日を重ね、ボディなどについた傷すらも価値になる新しいクルマのあり方が注目を集めました。このプロジェクトは、開発責任者の辻様の想いから始まりました。「今の工業製品はスクラップ&ビルドによって常に新しいものに入れ替わっていく。ですが、私はこのSETSUNAはその逆を目指しました。時を経て愛着を持てる今までにないクルマです」

時間を積み重ねるほど価値が高まるクルマへ。

ボディは86枚の木のパネルで構成。一枚一枚手でつくられているため、一枚ずつ違った表情があり、違った変化をしていきます。長い月日の中、どうしても修理をしなければならなくなった時には全体を交換するのではなく、その一枚だけを交換することが可能です。「木の家の場合、“この家は、おじいちゃんの時代から住んでいるんだよ。ここに傷つけたのはあなたのお父さんなんだよ”という歴史があると愛着がわくじゃないですか。クルマも新しいほうが価値が高いのではなく、木の家と同じように積み重ねた時間が価値になるようにできるのではないかと考えたんです」

新聞記事に取り上げられた、価値観の新しさ。

使用する樹種の選定、木部の設計、加工、組み立て方法の提案などを住友林業が行いました。日本古来の伝統技法「送り蟻」「くさび」などを取り入れ、木の接合には釘やネジを使用していません。辻様は、SETSUNAについて書かれていた新聞記事を紹介してくださいました。「“このクルマは時代に逆行しているかもしれないが、最先端をいっているかもしれない”とその記事には書かかれていました。テクノロジーでは最先端ではないと思いますが、価値観の新しさを共感していただけたと思っています」SETSUNAは、建築以外の分野でも木化が可能であり、新たな価値を提供する事例となりました。