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気候変動への適応
基本的な考え方
近年、地震や水害、台風による大規模自然災害が増加し、経済へ甚大な被害をもたらすとともに、それにより、社会及び私たちの生活を脅かす事態も発生しています。また、そのような大規模な地震や風水害などの自然災害が発生した場合には、保有設備の復旧活動や引渡し済みの住宅に対する安全確認及び建築請負物件などの完工引渡しの遅延などにより多額の費用が発生し、住友林業グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
住友林業ではこの対策として、耐震性の高いBF構法の住宅販売や、ライフラインが遮断されても一定期間生活を続けられる機能を備えたレジリエンス住宅の販売を推進しています。また災害時の被災状況をIoT技術によって遠隔で即時に把握し、迅速な支援を目指すサービスの構築を進めています。
気候変動に適応した社内体制
防災対策室の取り組み
震災や気候変動に伴い増加する風水害に備え、住宅事業本部では「災害対策要綱」を整備し、住宅を引き渡したお客様などへの対策と行動指針を定め、迅速かつ的確な災害対策を講じるようにしています。その一つとして、2020年より防災対策室を設置し、平時より有事に備えた防災対策の実施を各支店・各社に対して指示しており、有事が起こった際は当該部門・関係会社を指揮し、災害による被害を最小限に抑えるべく、取り組んでいます。
2024年1月に発生した能登半島地震においては、北陸災害復興センターを設置し、被害にあわれたお客様の住宅の点検・補修工事を実施しました。また、9月に発生した奥能登豪雨では支店と共に、被災したお客様宅の応急対応にあたりました。
災害復旧支援へのIoT活用
「災害状況の迅速把握」への課題
日本は地震が多い国ですが、近年では気候変動による自然災害の激甚化に伴い集中豪雨や台風などによる被害も多発しています。日本における自然災害による被害額は1991年から2018年の合計で4,466.3億ドルに達しています※。
大きな災害ほど復旧に時間がかかるのはもちろん、被災状況の把握も長期化する傾向にあります。2016年4月に発生した熊本地震では、二次災害を防ぐために行政が行う建物の応急危険度判定だけでも、完了までに約1.5ヵ月を要しました。「対応のために必要な情報が得られない、時間がかかる」など被災者の不安の声は強く、復旧を急ぐ上でも大きな課題となっています。
※ルーバン・カトリック大学疫学研究所災害データベース(EM-DAT)より中小企業庁作成
被災住宅のデータを迅速収集
住友林業ではこのような課題に対して、被災後の速やかな復旧を促すサービスの開発を進めています。2017年より、住友林業の解析技術を活かしたIoTサービス、具体的にはセンサーで建物の状況を計測・収集・分析する実証実験に取り組んできました。複数のセンサーを住宅に取り付け、地震の揺れの大きさや浸水状況などをデータとして取得、ネットワークを介して収集し、分析するものです。筑波研究所の膨大な木造住宅耐震実験データ等と組み合わせることで高い精度での分析が可能となります。
2024年12月までに全国98ヵ所で展開しており、継続してデータの収集を行っています。また、建築物の被災度を自動判定する仕組みについてシステム開発が完了し、現在は収集したデータを用いて検証を進めています。これからも災害時にお客様の安心・安全を守るための新たなサービスとして、実用化の検討に取り組んでいきます。

住宅の内壁に取り付けられたセンサー
データ収集のしくみ

被災したお客様と地域の速やかな復旧をサポート
センサー設置の実用化により住宅の被害状況を遠隔で確認できれば、被害状況の迅速な把握・報告や復旧工事の手配などお客様に必要な支援が速やかに取れます。これまで担当者が一軒一軒目視で確認していた「時間がかかりすぎる」課題や、大きな災害では「そもそも現地に近づけない」といった課題もクリアされます。
また収集したデータを二次活用することで、多くの人びとの安心につながる新たなサービスを開発することも可能です。例えば、損害保険会社と連携し、保険金の支払いに必要な損害鑑定を迅速化することで、より早い生活再建をサポートできます。
また、お客様や自治体へデータを提供して応急危険度判定などの二次災害の防止に役立ててもらう、さらにはデータの分析結果を基に、耐震性や耐久性を高める技術開発も促進されます。

収集したデータの活用例
気候変動に適応した住宅の販売
様々な災害に強い「住友林業の家」
住友林業の木造住宅の特徴は、独自の「ビッグフレーム(BF)構法」です。これは、一般的な柱の約5倍の太さの主要構造材を強力な金物で固定する構法で、高い耐震性・耐風性を備えています。3階建て住宅の実物大モデルを使用した耐震実験では、東日本大震災クラスの地震や、繰り返し襲ってくる余震にも耐えられることを確認しています。また、2019年に首都圏に大きな被害をもたらした台風15号(最大瞬間風速57.5m/秒)をはるかに上回る、最大瞬間風速88m/秒にも耐えられる高い耐風性能も備えています。さらに、防火性においても、「省令準耐火構造の住宅」に標準仕様で対応。火災保険料の水準は鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造と同等となっています。
抜群の建物強度を誇る独自の「BF構法」で居住者の安全を確保し、太陽光発電システム・雨水タンク等の設備や充実した備蓄スペースで、万一ライフラインが遮断されても復旧までの一定期間生活を続けられる機能を備えています。加えてネットワークカメラ付きテレビドアホンを選択すれば、ワイヤレスカメラで室内を確認することができ、災害時に外出先からも自宅の状況が確認できます。また、備蓄スペースの確保では日常生活で所有物の整理にも役立ち、オリジナル造り付け家具は震災時の転倒防止で安全を確保するとともに室内を調和の取れたすっきりとした空間にすることができます。
災害に強く、日常の快適性も高めた「BF構法の住まい」

「自宅での避難生活」に対応する住宅の提供
大規模な災害では、災害発生時には無事だった一方、避難所生活によるストレスで体調を崩してしまうようなケースが少なくありません。また、電気や水などの生活ライフラインの復旧も時間がかかる場合があります。
そこで重要なのが、自宅を避難場所とする「自宅での避難生活」という考え方です。
住友林業では耐震性の高いBF構法と、ZEH性能を基本に様々な備えを施します。ZEH仕様の高い断熱性能により省エネルギーな生活を可能にしながら、太陽光発電システムをはじめ、家庭用燃料電池、蓄電池システム等による電力確保を実現します。さらに強風対応のスレート屋根や、漏電による火災発生を防ぐ漏電火災警報器、停電時に懐中電灯としても使用できるホーム保安灯、断水時に生活用水として利用できる雨水貯蓄タンク等様々なレジリエンス対応仕様で「自宅での避難生活」に対応しています。
レジリエンスの強化
住友林業の家はこれまでも木の特性を活かす技術や、数々の実験に裏付けられた性能により、想定外ともいわれる自然災害に力を発揮してきました。災害発生後も自宅での避難生活が、よりスムーズにできるよう、レジリエンス部材を推奨設定としています。
レジリエンス強化の3つのポイント
- 「地震に強い」BF構法
- 「火災に強い」省令準耐火構造(外部からのもらい火はもちろん、耐火性の高い壁・天井材やファイヤーストップ構造で室内からの延焼を防止)
- 「雨や風に強い」万が一の災害に備え、強風対策仕様の屋根施工と災害用基礎水抜きスリーブを設定
2020年にはレジリエンス性能向上のために以下の仕様を推奨設定としました。
- 雨水タンク
- スレート屋根の強風時仕様
- 災害用基礎水抜きスリーブ(床下浸水、床上浸水時、基礎に溜まった水を排水するためのスリーブを設けることで水害時初期のリカバリーが可能に)
- ホーム保安灯(普段はナイトライトとして、停電時は保安灯として利用。非常時は取り外して携帯電灯として使用)
- 漏電火災警報器(万が一漏電が発生した場合、警報音にて異常を知ることが可能)
今後もお客様が安心していただける安全な「住友林業の家」を提供していきます。
まちづくり事業における地域防災
レジリエンス強化への取り組み
住友林業のまちづくり事業では、事業規模に応じて提供公園を計画する際、災害時に地域に不足しているインフラを提供公園内に整備し、新しくできる「まち」と周辺の既存の「まち」に対するレジリエンスを強化する取り組みを行っています。「新しい住民だけでなく、地域の住民に対しても安全・安心なまちを提供する」ことを目標にしています。防災の観点から、一時的に避難できる広場や炊き出しのできる設備、生活水の確保、汚水マンホールの設置など計画地の状況に応じ整備し、まちづくり事業を通じて、「人とまちのつながりを育む」共助の場として、暮らしの安心を育みます。
フォレストガーデン国立 樹々の園
住友林業グループのプロジェクトである「フォレストガーデン国立 樹々の園」では、自治体に既存の防災倉庫や避難場所がなかったことから、災害時に周辺住民も避難し、一時的なよりどころになれる公園として防災設備に特化した公園を提供しました。公園には、防災倉庫をはじめ防災井戸、汚水用マンホール、かまどベンチ、パーゴラ※などを設置しました。加えて、公園には自生種の活用と環境負荷低減を目的に、既存の雑木林の樹木を多数移植。もともと生息していた昆虫や鳥類の生息環境の変化を極力なくし、自然豊かな公園を構築しました。
※ツル性の植物を這わせる棚。公園ではベンチの上に設置させることが多い

フォレストガーデン国立 樹々の園公園

フォレストガーデン国立 樹々の園公園樹種(一部)
防災レジリエンス強化についての考え方

フォレストガーデン国立 樹々の園
気候変動に対して強靭な品種の共同研究
2022年10月、インドネシアの森林を対象とした「気候変動適応型育種プロジェクト(熱帯林強靭化プロジェクト)」が本格稼働しました。このプロジェクトは、日本及びインドネシアの産・官・学による共同プロジェクトです。住友林業は、日本から参画する唯一の民間企業として、日本、インドネシア双方の大学、研究機関と共に気候変動に対して強靭な品種を共同で研究・開発し、林業のレジリエンス(耐性力・復元力・回復力)を高め、持続的な林業を実現することを目指しています。
インドネシアでは、気候変動によって熱帯林を含む森林の減少・劣化が進むことが懸念されています。本プロジェクトではインドネシアの主要樹種を対象に、気候変動に適応できる個体を選んで増やす技術を開発します。住友林業は、インドネシアにある製造グループ会社のクタイ・ティンバー・インドネシア(KTI)や、植林グループ会社のワナ・スブル・レスタリ(WSL)、同マヤンカラ・タナマン・インダストリ(MTI)を拠点に、組織培養や挿木などの技術を用いて選抜した樹木の増殖と苗木の生産を担当します。また、気候変動による環境変化のシミュレーションを行い、選抜した優良個体を植林することで、CO2吸収源・貯蔵庫としての森林の機能改善と強化を目指します。気候変動への適応性が高い森林を育成することで、生態系機能の回復や、将来にわたる木材生産体制が形成され、インドネシアの地域社会や経済にプラスの効果をもたらすことが期待されます。


KTIでの育苗・植林の様子
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