持続可能な森林経営

国内森林資源の保全

基本的な考え方

日本では近年、全国各地でスギ・ヒノキなどの人工林の荒廃により、水源涵養などの森林の持つ公益的機能が損なわれることが懸念されています。木材価格の低迷から林業の採算性が悪化し、間伐などの適切な手入れができなくなっていることなどがその要因と言われています。林業を活性化させて森林の荒廃を防ぐため、日本政府は2025年までに木材自給率をおおむね50%まで高めることを目標にしています。住友林業としては、経営山林面積の拡大、スマート林業の導入、早生樹の増殖や植林・育林技術の開発、コンテナ苗木事業の拡大、ICTを活用したソリューションビジネスを推進しながら、日本政府の目標に貢献していきます。

住友林業社有林内訳

住友林業社有林内訳

社有林管理を通じた森林資源の
維持・拡大

住友林業は、国内に総面積約4.8万ha(国土面積の約800分の1)の社有林を保有しています。社有林は、木材生産を重視する「経済林」と環境保全を重視する「環境林」に区分しています。

住友林業では2006年に、日本独自の森林認証制度であるSGEC※1の森林認証を全社有林※2で取得し生物多様性の保全などを含め、社有林が適正に管理されていることを第三者から評価されています。森林認証の取得後に新たに購入した森林についても順次認証審査を受け、認証率は100%となっています。

施業においては、森林資源の維持・拡大を図るために、生態系など周辺の環境に配慮しつつ適正に間伐を実施しています。また、「適地・適木・適施業」を旨とした施業計画のもと、生産性の高い社有林経営を目指しています。

※1 「緑の循環認証会議」。持続可能な森林経営が行われていることを第三者機関が証明する日本独自の森林認証制度。生物多様性の保全や、土壌及び水資源の保全と維持など7つの基準に基づいて審査。2016年6月に国際的な認証制度であるPEFC※3森林認証制度との相互認証が認められたため、国際的な認知度が高まっている

※2 住友林業社有林のうち、グループ会社でゴルフ場を経営している河之北開発株式会社への賃貸地及びその周辺の山林は除く。新規に購入した山林は、翌年度に拡大審査を受けるため除く

※3 Programme for the Endorsement of Forest Certification Schemes。各国・地域で作成された認証基準を国際的に共通のものとして相互承認する国際的NGO。55ヵ国の森林認証制度がPEFCに加盟し、うち47ヵ国の森林認証制度が相互認証されている(2021年9月末現在)

社有林の分布・面積(2021年12月末現在)

社有林の分布・面積(2021年12月末現在)

林業活性化に向けた取り組み

地方創生につながるコンテナ苗木生産

地方創生の一環として、有効活用しきれていない森林資源の整備や林業再生に取り組む自治体が増えています。また、戦後植林されたスギ、ヒノキやカラマツは収穫期を迎え、近年、皆伐面積が増加しています。皆伐後の再造林面積の増加に伴い、苗木の安定供給体制の整備が望まれますが、生産者の減少などにより今後、供給不足になることが予想されています。

住友林業では、いち早くコンテナ苗木生産の近代化に着手。独自に研究開発した生産技術を活用し、適切に環境管理された施設栽培型の生産施設の運営等を通じて、森林資源の持続性と積極的な資源生産に寄与していきます。

具体的には、2012年に宮崎県日向市に環境制御型苗木生産施設を開設したのを皮切りに、北海道紋別市でも施設を整備しました。施設内の温度や湿度などを管理することで、通年での生産が可能となり、従来の露地育苗と比べ、単位面積あたりの生産量が飛躍的に増加しています。2016年度に岐阜県下呂市、2017年度には高知県本山町、2018年度には群馬県みどり市、2019年度には福島県南会津町に生産施設を開設しました。全国で年間190万本の苗木を生産できる体制を整えました。

また、自社設備における生産だけでなく、2020年度には生産を委託する方式を岐阜県内で展開し、2021年度には住友林業が技術提供を行う方式を鳥取県日南町で展開しました。苗木生産にかかる人材の雇用や新たな技術の開発・普及などの分野でも地域の自治体と連携し、地方の活性化に寄与していきます。

全国に広がる住友林業の苗木づくり

全国に広がる住友林業の苗木づくり

早生樹林業の取り組み

住友林業では、近年注目が高まっている早生樹林業への取り組みを始めました。早生樹とは、スギ、ヒノキと比較して成長が早く短い伐期で収穫が可能な樹木のことで、コウヨウザン、センダン、ヤナギなどがあります。

日向山林事業所では、熊本県内や宮崎県内の社有林において、コウヨウザンの試験植栽を実施しています。成長量の調査などを通じて、下刈回数の低減やスギとの成長比較をモニタリングし、新たな植栽樹種としての可能性を検討しています。

その他、燃料材に適した成長の早い広葉樹の試験植栽などについて、山林部と筑波研究所が協力し試験に取り組んでいます。

コウヨウザン

コウヨウザン

植栽作業の労働負荷軽減に向けた
林業用運搬ドローンの開発

スギやヒノキなどの植栽作業では、作業者が約10㎏もの苗木を背負い運んでいます。特に日本では傾斜地が多く、作業者への労働負荷が大きく、労働力の確保が困難な状況になっています。

そこで住友林業では、農業分野で実績のあるドローン製造・販売会社と共同で苗木を運搬するドローンの開発を進めてきました。複雑な地形や厳しい気象状況において、安全にドローンを飛行させ、また、苗木を確実に荷下ろしする実証試験を住友林業社有林で繰り返し実施しました。試験を踏まえて、様々な改良を加え、2020年度に林業用苗木運搬ドローン「森飛(morito)」として、全国に販売を開始しました。

販売活動を進めていく中で、苗木だけではなく、近年増加が見られる獣害対策に使用する資材など、重量物の運搬についても、現場ニーズの高まりがあることが分かってきました。そこで林業用資材の運搬を見据えた改良を進めるなど、林業界全般における労働環境の改善に取り組んでいます。

林業用運搬ドローン「森飛(morito)」

林業用運搬ドローン「森飛(morito)」

林業用路網設計支援ソフト
「FRD」の発売

国内林業においては、林道や森林作業道の整備が不十分である場合が多く、そのような場所では、森林の管理や伐採した木材の運搬をスムーズに行うことができません。現在、森林に林道や森林作業道を整備する際には、紙の地形図上に手書きで線形案を作成した上で現地へ向かい、線形案の通りに路網開設が可能かを繰り返し検証するのが一般的です。この線形案の作成と現地での確認・検証作業は、個人の勘や経験に頼る部分が大きく、多大な時間と労力が掛かっているのが実情です。

本ソフトは、航空レーザー計測等で得られた精密な地形データを活かして林道や森林作業道などの林業用路網を設計するために用います。最大の特徴は、操作画面上で出発地と目的地を入力することで、線形を自動的に設計できる「自動設計」の機能を備えていることです。この機能では、事前に設定した縦断勾配や曲線半径などの条件、幅員・作業コストなどのパラメータに基づき、線形案を作成できます。また、ソフト上で危険地形を意識できるようにしており、計画の時点で崩壊のおそれのある箇所など回避したい箇所がある場合は、回避箇所を設定することでそれを反映した安全な線形の設計が可能であるなど、実務上必要な機能を多く備えています。ソフト上で設計した路網の線形案を基に現地の踏査を行うことで、効率的な現地確認作業が可能となります。

自動設計画面(イメージ)

自動設計画面(イメージ)

ウインチアシスト型林業作業機械
「テザー」の普及展開

住友林業は、日本キャタピラー合同会社、株式会社サナースと共同で開発したウインチアシスト型作業機械テザーについて、2022年度は林野庁の助成を活用し、機械の改良と日本各地の林業事業体での実証を行う予定です。

引き続き、機械を活用し、傾斜地での林業の安全性向上や環境に配慮した林業の実現に取り組んでいきます。

テザーを用いた作業風景

テザーを用いた作業風景

リモート式下草刈り機械の林業向け
改良と普及展開

全国森林組合連合会および農林中央金庫と共同で、林業用リモート式下草刈り機械の実証実験を行っています。

従来の手持ち式の下草刈り機から、植栽時の地拵えや下草刈り作業の労働負荷を軽減するとともに、リモート式にすることにより、労働安全性を高めています。再造林促進と担い手確保につなげることが目的で、海外製の下草刈り機械の改良や施業方法の工夫を含めた実験を繰り返し、2022年度での実用化と普及を目指しています。

リモート式草刈り機械の作業風景

リモート式草刈り機械の作業風景