持続可能な森林経営

海外における森林管理

基本的な考え方

SDGsなど持続可能な取り組みへの関心が高まる中、住友林業グループは、地域社会や環境に配慮した森林事業を展開しています。木材を生産するための植林地である「経済林」の管理、生態系の保全やCO2の吸収・固定を担う「保護林」の保全、それらをとりまく「地域社会」との共生を通じて、広域の環境を維持したうえで、木材の安定供給と地域の経済発展に貢献します。

2021年度の海外管理森林面積等
(面積単位:ha)

植林事業名 管理面積 施業面積 2021年
植林面積
2021年
伐採面積
インドネシア マヤンカラ・タナマン・インダストリ(MTI) 104,664 10,534 2,238 2,815
ワナ・スブル・レスタリ(WSL) 40,750 11,451 1,820 2,311
クブ・ムリア・フォレストリ(KMF) 9,270 5,688 0 0
クタイ・ティンバー・インドネシア(KTI) 6,384 6,384 1,295 235
小計 161,068 34,057 5,353 5,361
パプアニューギニア オープン・ベイ・ティンバー(OBT) 31,260 11,618 370 250
ニュージーランド タスマン・パイン・フォレスト(TPF) 36,599 27,922 840 753
合計 228,927 73,597 6,563 6,364

※ 2022年上期より伐採と植林を開始

海外における森林管理

住友林業グループは、「産業植林」「環境植林」「社会林業」の3つのアプローチで植林事業を展開しています。木材を生産し、植林木の原材料供給を増やすことを目的とした「産業植林」では、管理する土地を適切にゾーニング(区分)することで、貴重な生態系の保全と植林事業による地域社会の発展を両立する事業を目指しています。

さらに、環境保全を目的とした「環境植林」も実施しています。そのままでは森林の成立が難しい土地で積極的に植林することで、森林面積の拡大や森林が持つ生態系サービスの機能発揮による環境保全への貢献を目指しています。また、周辺地域住民の協力を得ながら、地域社会にも植林による経済効果がもたらされる「社会林業」にも取り組んでいます。

海外植林地の分布・面積
(2021年12月末)

海外植林地の分布・面積(2021年12月末)

森林認証制度を活用した持続可能な植林事業

オープン・ベイ・ティンバー(OBT)社が管理する約30,000haのうち、3分の2を占める約20,000haにおいてFSC®森林認証を取得しています。年間400haの植林を目標とし、地域社会・環境と調和した持続可能な森林経営を実践していきます。2021年度の植林実績は370haでした。

また、タスマン・パイン・フォレスト(TPF)社が管理する全エリア約37,000haにおいてFSC®-FM認証を取得しています。2021年度は約840haの植林を実施し、地域社会・環境と調和した持続可能な森林経営を実践していきます。

※ OBT:CW認証FSC-C019117、FM認証FSC-C103694、TPF:FM認証でFSC-C132002

インドネシア西カリマンタン州における植林事業(産業植林)

住友林業は、インドネシア環境林業省から「産業植林木材林産物利用事業許可※1」の発行を受けて、マヤンカラ・タナマン・インダストリ(MTI)社及びワナ・スブル・ レスタリ(WSL)社にて2010年から大規模な植林事業を展開しています。

背景

本事業の植林対象地は、1960年代から1990年代前半まで商業伐採が行われ、さらに違法な森林伐採や焼き畑が繰り返され、森林の荒廃化が進んでしまったエリアです。

このような土地で、経済的にサステナブルな植林事業を行うこと、一方で保護価値の高い森林は責任を持って保全すること、さらに事業を通じて地域住民に経済的な基盤を提供することは、ESGの観点において大変意義のある事業と考えています。

また本事業地は、地球規模の炭素循環、水循環に極めて重大な役割を果たしている熱帯泥炭地に存在しています。

持続可能な森林経営の推進

本事業を開始するにあたり、5年もの歳月をかけ、綿密な地形測量、また泥炭の分布や深さを把握するためのボーリング調査を実施しました。また、2012年に世界銀行のグループ機関であるIFC(International Finance Corporation:国際金融公社)とアドバイザリー契約を締結し、「保護価値の高い森林(High Conservation Value Forests:HCVF)※2」の考え方に沿って、IFCと共同で事業地内にて、土地利用計画の実施及び生物多様性や地域住民の生活への配慮などについて調査を行いました。調査報告書は第三者機関による査読も受けており、これらのステークホルダーからの貴重なコメントは事業計画に反映されました。さらに、2013年に、ステークホルダー(地域住民、周辺の企業、学識者、NGO、政府関係者)を招き、調査の内容と結果を共有するための公聴会を開催しました。インドネシア林業省が定めた持続可能な森林管理証である、PHPL認証(Sertifikat Pengelolaan Hutan Produksi Lestari)を取得しました。

事業を開始して以来、従業員が一丸となって地道な努力を継続してきた結果、1年間を通して地下水位を安定させる、独自の泥炭管理モデルを構築することができました。その結果、温室効果ガス排出や森林火災を抑制し、さらに水循環を適切に保つことで、地球規模の気候変動対策に大きく寄与することにつながります。本泥炭管理モデルは、成功事例として国内外で高く評価されています。

さらに、当エリア及び周辺には希少動植物が生息する生態系が島状に取り残されています。動植物を孤立させないよう、住友林業だけでなく隣接する事業体とも協力しながら生態系を一体的に保全することにも取り組んでいます。

2020年度には、WSL社とMTI社に隣接する植林地を取得し、住友林業100%⼦会社であるクブ・ムリア・フォレストリ(KMF)社を設⽴し、WSL社及びMTI社と一体的な事業運営や環境保全の取り組みを進めています。

住友林業グループは、熱帯泥炭地やそこに広がる泥炭生態系を貴重な自然資本の一つと捉えています。今後も産業植林と環境保全を両立した事業を行うことで、自然資本としての価値を高めていき、グローバルな課題の解決に貢献していきます。

※1 インドネシア政府から発行される、同国において産業植林を行うための事業許可

※2 森林の価値を考える際に、温室効果ガスの吸収源としての価値にとどまらず、絶滅のおそれがある希少な動植物の生息地であることや、水源の確保、土壌浸食抑制など自然の基本的なサービスを提供していること、地域住民の生活や文化に関係の深い土地であることなど、森林の持つ多面的な価値を一つひとつ客観的に抽出する方法

「自然資本の価値向上」の歩み

2017年
  • 泥炭地を持続的に管理する独自の水位管理技術を検証し、インドネシアにおける泥炭地管理モデルを確立することを目的として、パイロット・プロジェクトのMOU(基本合意書)をインドネシア環境林業省(森林研究開発庁)と締結した。期間は5年間。プロジェクトは環境林業省及び泥炭復興庁と協力して実施する。
  • 先端的な優良泥炭管理事例として、インドネシア政府の要請を受けて2017年11月、ドイツ・ボンで開催された気候変動枠組条約締約国会議COP23において本事業の泥炭管理技術を紹介した。
2018年
  • 2018年にはIFCの協力を得て、「苦情処理メカニズム(Grievance mechanism)」を策定した。 また、インドネシア大学と共に、事業地及び周辺を対象とした3年計画の社会調査を開始した。
  • 2018年12月にポーランドで開催された国連気候変動枠組条約締約国会議COP24において、泥炭管理技術を発表した。
2019年
  • 8月に横浜で開催された第7回アフリカ開発会議にて、当社がWSL社泥炭管理や植林事業の取り組みについて発表を行った。「熱帯泥炭林は地球の肺だけでなく、地球全体に水を送り込む心臓でもある」と紹介した。
  • 9月にニューヨークで開催された国連気候行動サミットのサイドイベントで、火災を予防する泥炭管理システムについて発表した。
  • 12月にマドリードで開催された国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)において、水位管理技術や希少生物の保全について発表を行った。
2020年
  • 国連環境計画(UNEP)主催のGlobal Landscape Forumにおいて、泥炭管理は炭素排出の問題だけでなく、森林・農業・食糧問題として捉えるべきという当社の意見が、メインテーマとして取り上げられた。
  • これまで培ってきた泥炭管理のノウハウについて論文の執筆を行い、また、国際泥炭学会編の泥炭管理専門書(2021年4月出版)の分筆を担当した。
  • 国際機関であるIDH(The sustainable trade initiative)と共に、自然資本の評価手法や付加価値化についての協議を開始した。
2021年
  • 11月にグラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)において、ジャパンパビリオン、インドネシアパビリオン、泥炭パビリオンの3つで発表を行い、熱帯泥炭地の管理技術、及び熱帯泥炭地が持つ自然資本価値とその評価・モニタリング技術を紹介した。

各施業地の森林火災対策について

インドネシア

従来、泥炭地での植林は排水型の水位管理によって行われており、多くの排水路をつくり、土壌中の水を川へ排水することで、土地を乾燥させた上で植林を行っていました。しかし、土地を乾燥させると、泥炭土壌中の有機物が分解され、温室効果ガスが放出されることで地球温暖化を促進します。また、乾いた泥炭は一度燃えると、火は地下にまで及び、消火が難しく、大規模な泥炭火災にもつながってきました。

一方、WSL社とMTI社は貯水型の水位管理を行っています。まずゾーニングやインフラ整備計画に必要な精緻な測量や泥炭調査を行い、その結果にもとづいて、(1)希少価値が高く貯水機能も併せ持つ保護林や水辺林(2)植林ゾーンの影響を保護林に与えないようにする緩衝帯、(3)植林ゾーンを決定しています。

これまでの取り組みの結果から、泥炭の厚みのリアルタイムでの計測開始以降、日、週、月ごとといった短期間では収縮を繰り返しつつも、長期的には泥炭の厚みが減少していないことが明らかになっています。つまり、泥炭からの温室効果ガス排出を抑制し、火災対策にも貢献しています。

また、泥炭地の管理に必要なインフラ技術の開発も事業開始より継続しています。「シンプル・低コスト・容易なメンテナンス」をコンセプトとしており、インドネシアを含む世界の熱帯泥炭地で広く普及できる管理技術の確立を目指しています。さらに、住友林業の事業開始時のような膨大な量の調査に代わる手法として、ドローンやAIを活用してデータを収集・解析する技術の開発にも取り組んでいます。

アマゾン、コンゴ盆地、インドネシアといった主要な泥炭地の存在する地域は、世界で最も雨の多い地域です。泥炭地の土壌は8~9割を水で占めており、熱帯林と泥炭地は、雨季に降る大量の雨水を地中にため込み、そして蒸発散を通して、大気中に水を送り込む役割を担っています。熱帯林と泥炭地による膨大な蒸発散がローカルにも、大陸スケールにも、全球スケールにも重要な水循環の機能を果たしている可能性があります。地球の水循環が崩れれば、異常気象を引き起こし、農業活動にも影響を及ぼし、さらには食糧問題にもなり得ます。泥炭地での事業を通じてこの事実をいち早く確認した住友林業は、2019年8月に横浜で開催された第7回アフリカ開発会議において発表を行い、地球全体に水を送り込む「地球の心臓」とも言える熱帯林と泥炭地を適切に管理する重要性を唱えました。

※ 泥炭地の定義:泥炭湿地を特徴づける泥炭⼟壌は、不適切な開発が⾏われると、⼤気中に温室効果ガス(⼆酸化炭素やメタンなど)を⼤量に放出することが知られている。当事業では、⽇本やインドネシアの学術機関との共同研究によって、開発による泥炭の分解とそれに伴う温室効果ガスの放出を最⼩限に抑える配慮を⾏っている

綿密なデータに基づく植林事業地のランドスケープマネジメント

綿密なデータに基づく植林事業地のランドスケープマネジメント

綿密なデータに基づく植林事業地のランドスケープマネジメント

泥炭地水位のモニタリング

泥炭地水位のモニタリング

パプアニューギニア

オープン・ベイ・ティンバー(OBT)社では、防火帯の整備や林地残材の整理による植林地の失火延焼対策のほか、毎日の気温、雨量及び湿度の計測により火災発生危険度をモニタリングしています。危険度が高まった場合には、通常1日1回実施している施業地の巡視を、2回の実施に強化し、火災の予兆確認の徹底を図っています。これらの取り組みにより、2021年の火災発生件数は0件を達成しています。

ニュージーランド

タスマン・パイン・フォレスト(TPF)社では、ニュージーランドの消防庁であるFire and Emergency New Zealand(FENZ)、自治体、近隣の林業会社など各関係機関と連携し、近隣住民への啓発活動を継続的に実施するなどの防火対策を積極的に行っています。具体的には、火災発生のリスク度合いを示すFire Indexの掲示板の設置、地域住民向けの注意喚起リーフレットの配布、火災リスクが高まった際の消火用ヘリコプターの常時待機の仕組みづくり、消火剤の常備、Water Pond(貯水池)の適正配置・管理や、延焼防止のための林縁部の重点的な枝打ち、消火装置購入と訓練、パトロールの実施、林道の整備などを実施しています。また、火災リスクが著しく高い日は、伐採作業の時間制限・レクリエーション目的の入山の規制などの各種規制も実施しています。