自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏
今シーズンの冬は比較的暖かでしたが、立春の頃から連日寒い日が続きました。降雪は多くありませんでしたが、溶けた雪は寒さのためか屋根から40㎝近くもある長いツララをつくりました。軒下の地面から伸びている枝先にもツララができていました。
フォレストアークの近くに置いてある水場も凍りついており、氷の表面に奇妙なクボミができていました。その水場を狙っているセンサーカメラで確認すると、なんとシカが氷を舐めているではありませんか。氷を舐めて水分補給をしたその結果、氷の表面にクボミができたわけです。
植樹エリアの中には割と大きなヌタ場があり、動物や野鳥が沢山集まる人気スポットとなっています。そのヌタ場がそれまでより深く30㎝以上になっていました。そこにもセンサーカメラが設置してあります。動画をチェックするとイノシシが5頭もヌタ場でまるで「押し競まんじゅう」をするように泥浴びをしていました。たくさん集まったイノシシたちがブヒブヒブヒ…と、その結果としてヌタ場が深くなったようです。
「まなびの森」では「日本野鳥の会」南富士支部に委託しているモニタリング調査の1つとしての鳥獣生息調査が年4回行われています。2000年から25年継続しているこの調査は2月で100回を迎えました。1月と2月は冬鳥の調査が主目的です。鳥の数は多くはありませんでしたが、ちょっと珍しい発見がありました。苔むした倒木の上にホオノキの実が1つ転がっていました。その周りにはホオノキの実の殻が散乱しています。想像するに、リスがホオノキの実を食べていたのでしょう。そして、第100回の鳥獣調査は17名の参加者の下、無事終えることができました。
富士山の麓、富士宮の街中では梅が咲き始めましたが、「まなびの森」で一番早く咲くミツマタやオニシバリの蕾はまだ固いまま。開花はあと少し先でしょうが、季節は着実に春に向かって日も伸びています。
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積もった雪が溶けて40㎝近くもある長いツララが
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軒下の枝の先にもツララが出現
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水場は凍りついてまま その氷の表面に奇妙なクボミができています
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水場に集まってきたシカの群れ 氷を舐めて水分補給 その結果が氷表面のクボミ
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植樹エリアの中のヌタ場 深さが30㎝以上になりました
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このヌタ場にはセンサーカメラが設置 そこに集まったイノシシの群れがひしめきあっまるで「押し競まんじゅう」状態に
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鳥獣調査の様子 2000年から25年継続 年4回なので今回で第100回目
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苔むした倒木の上に残されていたホオノキの実のリス食痕
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第100回の鳥獣調査を終えて「はい、チーズ!」
新しい歳、2025年が始まりました。
昨年、天候異変のせいか巨大化したケヤキの葉っぱのことをご紹介しましたが、もう1つ森の中で異変がおきています。例年、今の時期のミツマタは枯れ枝と蕾だけになっているのですが、今年は一部の株で茶色の枯れ葉が沢山ついているのが見られます。これは落葉する時期の昨年11月ごろ気温が高めでまだ葉を落とす時期ではないと勘違いしたためと考えられます。温暖化がもたらした現象と言えるでしょう。
冬になり葉が落ちて見通しの良い森を歩いていると、空中に茶色いボール状のものが浮かんでいるのを見つけました。目を凝らすと、高さ10mほどのヒメシャラの細い枝先に作られたキイロスズメバチの巣であると分かりました。長さ30㎝ほどで少し長楕円の形をしています。スズメバチの仲間は次のシーズンに巣を再利用することはないので、そのままにしておくことにします。
毎朝、大きく育った霜柱は朝日にキラキラ輝き、まるで宝石のようです。キハダの根際がシカにかじられ、鮮やかな黄色が遠くからも見えます。一面茶色に覆われた殺風景な森のようですが、よく見るとあちこちに目を楽しませてくれるものを見つけることができます。
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朝陽を浴びて水晶のようにキラキラ輝いている霜柱
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シカに齧られ鮮やかな黄色が現れたキハダの根
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ヒメシャラの枝にあったキイロスズメバチの巣
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枯れ葉が付いたままになっているミツマタ
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たくさんのミツマタの蕾 開花は1ヶ月ほど先でしょうか
葉をスッカリ落とした森の中はさみしく感じますが、見通しが良く遠くまで見渡すことができます。そして、冬の冷え込んだ朝は、落ち葉が綺麗に霜に覆われて化粧しているように見え、また夏とは違う景色を見せてくれます。
冬枯れの森を歩いていると苔の上に黄色い実が落ちています。ヤドリギの実です。摘まみ上げてみると柔らかくてぷにゅぷにゅしていて粘り気があるので、まるで納豆のように指先化から糸を引いてぶら下ります。ヤドリギの実は小鳥たちの好物で、粘り気は鳥に食べられても消化されることがありません。ヤドリギの実を食べた鳥はお尻からヤドリギの種が糸を引いてついたまま飛んで、樹の枝に留まった時にその樹の幹にくっ付きそこからヤドリギの寄生生活がはじまります。
今年の春先は高い気温と雨が多く、夏には異例の高温が続き、それが影響したのでしょうか、ケヤキの葉に異変が起きました。図鑑では通常5~13㎝となっていますが、今年のケヤキの落ち葉は18~20㎝のものがたくさん落ちています。厚みもあり、ゴワゴワした落ち葉がたくさん見つかります。一瞬、ケヤキの葉ではないと思えるものが多く、なぜこうなったのかナゾは深まるばかりです。
ナゾを抱えたまま2024年は終わろうとしています。今年1年間ご愛読ありがとうございました。来年もさまざまな「まなびの森」をご紹介できたらと思います。
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この冬一番の寒さの朝に見られた霜化粧した落ち葉
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苔の上に落ちていたヤドリギの黄色い実
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ヤドリギの実には粘り成分があり、指先から糸を引くようになる
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ヤドリギの枝になっている実
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ケヤキの葉:右が7㎝ほどの通常の大きさ、左は18㎝ほどの巨大化した今年特有のもの
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イタヤカエデの羽根が付いた実 この羽根で風に乗って遠くまで運ばれていく