自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏
昨年以上に今年の夏は暑く、標高1,100mの「まなびの森」も例外ではありません。平地では連日猛暑が続いており、ここでも同様に暑い日々が続いています。
林床にスクっと立ち上がるのは黄緑色の花を咲かせるウバユリ、ピンク色の鮮やかな花をつけるのはツリフネソウ。そして、夏の終わりに咲く白い花はボタンヅル。夏は花が少ないながらも目を楽しませてくれる花々が咲きほこっています。
苔むした樹の幹にヒョロっと細長い先端がオレンジ色の目立つものがあります。そっと引っ張ってみて出てきたのは細い軸の先にカメムシがくっついています。冬虫夏草の仲間で、その名もカメムシタケです。今、この冬虫夏草の仲間を使って農薬を使わない害虫対策にしようという研究が進んでいるそうです。
森を歩いていると林床に目立つピンク色の細い棒状のものが生えています。先端が虫にかじられていたのが残念ですが、スッポンタケの仲間のキツネノエフデと言うキノコです。
ある日、フォレストアークの玄関前にアズマヒキガエルがのそのそと現れました。その顔つき、姿と動きはなんともほほ笑ましいではありませんか。
森で白い菊の花が見られるようになると長く暑かった夏もいよいよ終わりに近づいています。この白い菊の花はシロヨメナ、なぜだか分かりませんがシカが好まない為、森の中で増えている植物です。
ススキの穂も伸びて来て、秋はもうすぐそこまで来ています。
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盛夏に咲くウバユリの花
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鮮やかなピンク色の花が目立つツリフネソウはホウセンカの仲間です
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苔むした木の幹のコケの間からヒョロッと伸びたオレンジ色の物体
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引っ張り出してみるとカメムシから生えた冬虫夏草の仲間、カメムシタケだとわかります
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ボタンヅルの花、晩夏に咲く花
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ザトウムシを捉えて給餌しているクモ
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独特の形をしたキツネノエフデはスッポンタケの仲間、その先端は虫にかじられています
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白い菊の花はシロヨメナ、なぜかシカが食べない
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フォレストアークの玄関に現れたアズマヒキガエル
キヨスミウツボが咲き、ヒメシャラもたくさんの花ガラが落ちてきていることで開花が分かる7月となりました。そんな中、なぜかギンリョウソウが大幅遅れの開花となっています。季節どおりの5月初旬にも花を咲かせたギンリョウソウでしたが、7月の暑い季節に花を咲かせたのはチョッと珍しいことでした。
毎年、神出鬼没な場所で花を咲かせるキバナノショウキランが今年も新たな場所で数株咲きました。咲いている場所は予測不可能で、最近では意外な場所を見つけるのが一つの楽しみとなっています。
同じく菌従属栄養の無葉ランであるツチアケビは食用菌であるナラタケから栄養をもらっています。菌学者の話では、「こっちに美味しいエサ(=栄養)があるよ~」とナラタケの菌糸を誘い込んで、逆にツチアケビがナラタケを栄養源にするという高度な技を持っているそうです。別の言い方をすると、ツチアケビがナラタケを釣り上げて食べちゃった、と言うことになります。
フォレストアークのすぐそばで小さな虫が羽化していました。成虫になりつつあるその姿は小さな1cm弱のセミに似たものでした。しばらく見ていて分りましたが、それはアワフキムシでした。木の若芽や草の茎の汁を吸って生きていますが、自分の排泄物が泡となり隠れ家としている小さな昆虫です。その羽化を見たのは初めてです。
7月下旬のある日、森を歩いていると高いところでたくさんのハチの羽音が聴こえ、足元には薄緑色がかった小さな白い花ガラがたくさん落ちていました。ちょうど、「まなびの森」の「主の樹(あるいは、長老の樹)」と呼ばれているシナノキの巨木のすぐそばです。そして、そのあたりに淡い甘い薫りが漂っていて、シナノキに花が咲いていました。シナノキの花の香を感じたのは2年前に初めて嗅いだ以来です。たくさんのハチはその花の香りに集まってきて吸蜜しているのです。
今年は『まなびの森』で静岡県の「森林環境教育指導者養成講座」の1講座が開催されました。県内各地からの受講生が1日『まなびの森』で「森林の基礎知識」、「森林エコツアーの実践」をフォレストアークでの座学と森の中での実技を通して、熱心に学んでいました。実は、筆者も今を遡ること6年前に同じ講座を受講しています。
下界は連日の猛暑続きですが、『まなびの森』も30℃越えにはならないもののシッカリ暑い夏となっています。
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無葉緑素の寄生植物キヨスミウツボの花
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たくさんのヒメシャラの落花(花ガラ)
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ヒメシャラの可憐な白い花
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7月に花を見かけるのは珍しいギンリョウソウ 似ても似つかない姿ですが、ツツジ科の寄生植物です
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神出鬼没なキバナノショウキランは菌従属栄養の無葉ラン
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ツチアケビも菌従属栄養の無葉ラン ナラタケから栄養をもらっています
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アワフキムシの幼虫の隠れ家は自分で作る泡
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アワフキムシの羽化
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シナノキの落花 黄緑色のヘラ状のものは花の苞で、実ができた時にはこれがプロペラの役目を果たして種を遠くまで運んでいく
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「森林環境教育指導者養成講座」の実技で講義中の農工大の吉川先生
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同講座の「森林エコツアーの実践」で「千手観音ブナ」に集まる受講生
梅雨の始まりの季節になるとサンショウバラがピンク色のきれいな大輪の花を咲かせます。そして、その花の蜜に誘われてたくさんのマルハナバチの仲間が集まってきます。花から花へブンブンと飛びまわる羽音でサンショウバラの樹の周りはとても賑やかになります。
同じく梅雨時の花にエゴノキがあります。蒸し暑い中、エゴノキを下から見上げると真っ白な花をたくさん咲かせていて、見ているだけで爽やかな気持ちになります。そのエゴノキの花が例年に比べて数が多いです。花が散った樹では、その足元にまるで雪が積もったようにたくさんの花びらが落ちています。このような光景は初めて見ました。
さて、今年が巳年だからという訳ではないでしょうが、最近フォレストアークの周辺で2m近くもある大きなアオダイショウをよく見かけます。枯れ葉がカサカサと音を立てるので一瞬ドキッとしますが、アオダイショウだと分かって一安心。おそらく、同じ個体を見かけているのだと思います。
今年も苔むした樹幹にランの一種であるクモキリソウが花を咲かせています。普通は林床に生えるものですが、どうした訳かとある樹幹に毎年咲いています。数えてみると高さ3mくらいの所までに26株もありました。まだ花を付けない若い株もあり、これから株が少しずつ生長していくのが楽しみです。樹上だとシカに食べられないので、クモキリソウとしても安心なのでしょうか…
サンショウの青い実が大きく脹らんで、いわゆる実山椒となるころは梅雨明けも間近で夏本番の季節となるでしょう。梅雨に雨が少なかったので夏の日照りが少し心配ですが、今年は小学生の自然体験教室も順調に「まなびの森」で開催できてホッとしているところです。
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サンショウバラが今年もたくさん咲きました マルハナバチの仲間がたくさん飛びまわっています
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サンショウバラの花は大きくて目立ちますが、花の命は短いです
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アオダイショウと目が合いました
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その同じアオダイショウがフォレストアークの高窓の内側で蜷局(とぐろ)を巻いています
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翅の色がきれいなミヤマカラスアゲハは飛ぶのが早いですが、たまに地面に降りて一休み
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森の中の倒木に発生した色鮮やかなマスタケ(鱒茸)
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普通は林床に生えるクモキリソウが樹上性に シカの食圧を逃れた結果でしょうか
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同じ樹に26株ものクモキリソウ 樹上に大きな群落をつくっています
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森のヌタ場の水溜りの上に産み付けられたモリアオガエルの泡卵塊
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イタヤカエデの甘い樹液を舐めにきたキイロスズメバチ
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ヤマボウシ(山法師)の白い花 花びらのように見えるのは総苞片 それが白い頭巾を被った法師(僧侶)に見立てられた名前です
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毎年たくさんも花を咲かせるエゴノキ
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今年は特に花の数が多く、散った花びらで雪が降ったように地面が真っ白に
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スイカズラ(吸葛)の花 咲き始めは真っ白、その後だんだん黄色くなります 白い花の根元を吸うと蜜の甘味が楽しめます
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サンショウの実が大きく脹み、実山椒とかブドウ山椒と呼ばれます