自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏
新しい歳、2025年が始まりました。
昨年、天候異変のせいか巨大化したケヤキの葉っぱのことをご紹介しましたが、もう1つ森の中で異変がおきています。例年、今の時期のミツマタは枯れ枝と蕾だけになっているのですが、今年は一部の株で茶色の枯れ葉が沢山ついているのが見られます。これは落葉する時期の昨年11月ごろ気温が高めでまだ葉を落とす時期ではないと勘違いしたためと考えられます。温暖化がもたらした現象と言えるでしょう。
冬になり葉が落ちて見通しの良い森を歩いていると、空中に茶色いボール状のものが浮かんでいるのを見つけました。目を凝らすと、高さ10mほどのヒメシャラの細い枝先に作られたキイロスズメバチの巣であると分かりました。長さ30㎝ほどで少し長楕円の形をしています。スズメバチの仲間は次のシーズンに巣を再利用することはないので、そのままにしておくことにします。
毎朝、大きく育った霜柱は朝日にキラキラ輝き、まるで宝石のようです。キハダの根際がシカにかじられ、鮮やかな黄色が遠くからも見えます。一面茶色に覆われた殺風景な森のようですが、よく見るとあちこちに目を楽しませてくれるものを見つけることができます。
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朝陽を浴びて水晶のようにキラキラ輝いている霜柱
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シカに齧られ鮮やかな黄色が現れたキハダの根
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ヒメシャラの枝にあったキイロスズメバチの巣
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枯れ葉が付いたままになっているミツマタ
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たくさんのミツマタの蕾 開花は1ヶ月ほど先でしょうか
葉をスッカリ落とした森の中はさみしく感じますが、見通しが良く遠くまで見渡すことができます。そして、冬の冷え込んだ朝は、落ち葉が綺麗に霜に覆われて化粧しているように見え、また夏とは違う景色を見せてくれます。
冬枯れの森を歩いていると苔の上に黄色い実が落ちています。ヤドリギの実です。摘まみ上げてみると柔らかくてぷにゅぷにゅしていて粘り気があるので、まるで納豆のように指先化から糸を引いてぶら下ります。ヤドリギの実は小鳥たちの好物で、粘り気は鳥に食べられても消化されることがありません。ヤドリギの実を食べた鳥はお尻からヤドリギの種が糸を引いてついたまま飛んで、樹の枝に留まった時にその樹の幹にくっ付きそこからヤドリギの寄生生活がはじまります。
今年の春先は高い気温と雨が多く、夏には異例の高温が続き、それが影響したのでしょうか、ケヤキの葉に異変が起きました。図鑑では通常5~13㎝となっていますが、今年のケヤキの落ち葉は18~20㎝のものがたくさん落ちています。厚みもあり、ゴワゴワした落ち葉がたくさん見つかります。一瞬、ケヤキの葉ではないと思えるものが多く、なぜこうなったのかナゾは深まるばかりです。
ナゾを抱えたまま2024年は終わろうとしています。今年1年間ご愛読ありがとうございました。来年もさまざまな「まなびの森」をご紹介できたらと思います。
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この冬一番の寒さの朝に見られた霜化粧した落ち葉
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苔の上に落ちていたヤドリギの黄色い実
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ヤドリギの実には粘り成分があり、指先から糸を引くようになる
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ヤドリギの枝になっている実
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ケヤキの葉:右が7㎝ほどの通常の大きさ、左は18㎝ほどの巨大化した今年特有のもの
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イタヤカエデの羽根が付いた実 この羽根で風に乗って遠くまで運ばれていく
今年は本格的な秋の訪れが遅いことで紅葉が進みませんでした。11月初旬になってやっと色づきました。すでに茶色く枯れるように散ってしまった葉も多いので、例年と比べてどことなく寂しい感じがあります。
富士山の初雪観測記録も例年比1ヶ月以上遅れでしたが、ある日5合目あたりまで真っ白に雪化粧していました。11月にこのような雪化粧は最近では見られなかったので、気持ちが昂りました。
気温が高めの時期が長かったので、11月半ばになってもなお秋のキノコが発生しています。胞子の成熟とともに傘が溶けるように黒い液状になるヒトヨタケ(一夜茸)やモミの林床にオレンジ色が鮮やかな彩りを添えているアカモミタケなどが見られます。腐朽が進んだ木杭からは小さなキノコがたくさん発生しています。センボンイチメガサという名のキノコです。チョコレートお菓子の形状を彷彿とさせるフォルムでかわいらしいです。
11月末には今シーズン初の霜柱が立派に伸びていました。そんな寒い朝、キイロスズメバチが寒さで動きが非常に悪くなって、ヨトヨタと歩いていました。刺される心配も少ないので、アップで写真を撮ることができました。
森は葉が落ち切って冬枯れとなり、遠く駿河湾も伊豆半島も見渡せる静かな季節が訪れました。
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5合目あたりまで雪に覆われた富士山が11月にみられるのは珍しい
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遅い紅葉・黄葉のシーズンが「まなびの森」にも
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青空に映えるオオモミジの紅葉
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例年より数が少ない林床のモミジの錦
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11月になっても発生したヒトヨタケ
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モミの林床のアカモ三タケ
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木杭から発生したセンボンイチメガサ
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朝の寒さで動きの悪くなっていたスズメバチ
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今季初めての霜柱(5㎝)