まなびの森通信

まなびの森通信

自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏

【第239回】新緑から夏装いの深緑へ

2025年 5月30日

 新緑の黄緑色の森はマイナスイオンが溢れていて、とても清々しく気持ち良いです。森の中を歩いているだけで、緑のシャワーを浴びているようです。
ただ、今年の5月は肌寒い日も多く、フォレストアークの中にいるときには何度か石油ストーブを使うときもありました。
例年より気温が低いせいでしょうか、春先の花であるフデリンドウが5月中旬になっても咲いていました。逆に、5月頃に花を咲かせるニリンソウや寄生植物のヤマウツボが遅いようです。
 これからは、ヤマシャクヤクが純白の玉のような蕾から開花するまでの短い間はチョッとワクワクします。そして、今年は待ちに待ったサラサドウダンが咲きました。毎年たくさん花を咲かせていたのに去年は一輪も花を付けず、どうしたのかと少し心配していました。2年ぶりのサラサドウダンに遭えて安心しました。
 ある日、歩いていると枯れ葉が擦れる音がするので、目を凝らすと1mくらいの赤茶色のヘビが這っていました。そのあとを追いかけると、木の根元のくぼみに体を隠すように蜷局(とぐろ)を巻きはじめました。ジムグリというヘビです。「まなびの森」ではアオダイショウとジムグリを時々見かけます。
 春~初夏の花は白い花が多いです。サクラの仲間で花の時期が一番遅いミヤマザクラも、枝が硬く梅鉢模様が美しいカマツカも、また、ここまでにご紹介したニリンソウやヤマシャクヤクもみんな白い花です。そんな中、林縁に咲く深紅のヤブウツギはとても良いアクセントになっています。ヤブウツギは明るい林縁を好む木です。たくさんのヤブウツギが林縁に生えているところはまるでヤブウツギのトンネルのようになっています。
 「まなびの森」では見られませんが、今年はフジが花盛りです。山のあちらこちらで木が紫の衣装を着飾っているように見えます。
 そして、新緑から2週間も経つ頃には森は夏装いの深緑へとその姿を変えていきます。

  • 新緑の森はとても美しい その中を歩くとマイナスイオンでいっぱいです

  • 春を代表する草花の1つ、ニリンソウ

  • ヤマウツボの花 葉緑素を持たず、ブナなどに寄生しています

  • 5月になっても気温が低く、フデリンドウが咲き残っています

  • そして、5月末にはフデリンドウに実ができました

  • 真っ白な玉のような蕾

  • ヤマシャクヤクの花

  • ジムグリが蜷局を巻いています

  • 去年は一輪も咲かなかったサラサドウダンが今年はちゃんと咲きました

  • ミヤマザクラはサクラの仲間では一番最後に花をつけます そして、穂状に咲きます

  • 梅鉢模様のカマツカの花 枝は細くても非常に硬いので「鎌柄(かまつか)」

  • 森は一気に夏の装いの深緑に

  • 白い花が多い中で、目立つのが深紅のヤブウツギ

  • 木が紫の衣を纏ったように見えるのはフジの花のせい

  • 今年はあちこちでフジがたくさん花を咲かせています ※フジの写真は「まなびの森」のすぐ近くで撮りました

【第238回】百花繚乱が遅かった...

2025年 4月30日

 今年の春は3月に何度も雪が降ったことが原因なのでしょうか、春の花々の開花が遅かったです。平地のソメイヨシノが散ったころ「まなびの森」で咲き始めるマメザクラは4月中旬になってやっとほころび始め、満開になったのは4月下旬でした。
 ほかにも、例年春一番の花であるキバナノアマナ、フデリンドウ、アズマイチゲやネコノメソウの仲間も軒並み遅かったです。
 逆に、いつもは開花時期が4月上旬ころまでのミツマタは、3月の気温が低かったためか、4月下旬ごろまで咲いていました。
 ある日の朝、フォレストアークの玄関先で1匹のマルハナバチが弱々しくヨタヨタと歩いていました。寒さのために動けないのかと思い、手のひらに乗せ、ソッと息を吹きかけて温めてやっても特に変化はありません。命が尽きるのかと思い、せめて最期に蜜を吸わせてやろうと満開になったマメザクラに這いつかせてやりました。すると、すぐに吸蜜し始めました。そこで10秒ほど蜜を吸っていると、ブーンと次の花に向かっていくではありませんか。マルハナバチの余りにすばやい回復力に、花の蜜の持っているエネルギーに、あらためて驚かされた出来事でした。
 4月末には富士山の雪もかなり溶け、夏の雰囲気に衣替えしました。森が一番美しい新緑の季節もまもなくのことでしょう。

  • 今年のマメザクラは開花がだいぶ遅れました 大ぶりの濃いピンクと白い2本のマメザクラ

  • モクレンの仲間のコブシの花

  • 満開になったミツマタ 4月下旬になっても咲いています

  • 黄色い可憐な花を咲かせるキバナノアマナ

  • フデリンドウの開花も遅かった

  • アズマイチゲ

  • 名前が少しかわいそうなヨゴレネコノメソウ 開花している時、葉に白い斑点模様が見られ、それが汚れていると…

  • 4月末には富士山の雪もだいぶ溶けました (富士宮市役所最上階からの眺め)

  • マメザクラで吸蜜するマルハナバチ 実は…

【第237回】春はなかなか訪れず...

2025年 3月31日

 今年は3月になってもなかなか暖かくなりません。逆に、何度も雪が降りました。そのため、春告げ花や春の妖精(スプリング・エフェメラル)と呼ばれるキバナノアマナやアズマイチゲ、ニリンソウ、ヤマエンゴサクといった春を代表する草花が開花しないまま3月が終わろうとしています。
 雪が降る日があるかと思うと、次の数日は初夏のような気温の日があったりと、まるでジェットコースターのような気温の変化もありました。そんな不順な天候で植物のリズムが狂ってしまったのでしょう。日当たりの良いところにフキノトウが姿を現したのが3月半ば、ふだん春一番に咲くミツマタが咲いたのが3月の終わりといった感じでした。ミツマタはたくさんの花が小さなボール状に固まって咲くので、あたりは甘い香りに包まれます。
 春の雪は湿って重いので、降り積もる量が多いと木の枝が折れることがあります。雪が溶けたころに森を歩くと、たくさんの枝が落ちています。ほとんどが枯れ枝ですが、中には青々と葉をつけたウラジロモミが落ちていることもあります。新鮮な食べ物が乏しいために折れ落ちたウラジロモミの枝の樹皮をシカがかじり取っていました。シカはケヤキの根もかじっていました。よほど食べ物が乏しいのでしょう。
 毎年恒例の「企画懇談会」を3月19日に開催しました。フォレストアークにステークホルダーの皆さんをお招きし、直近の活動報告と各種の調査報告、新年度の活動計画を発表し、話し合う場として開催しています。今年も「まなびの森」の活動を安全に、円滑に運営していく上で、ステークホルダーの方々からいただいた貴重なご意見を活かしていきたいと考えております。

  • 3月初旬に今シーズン一番の10㎝ほどの降雪がありました

  • その後も何度か積雪があり、15㎝ほどまで

  • 森は乾燥していましたが、雪のお蔭げで苔も瑞々しい緑に

  • フォレストアークの水場近くに散乱していたヒヨドリと思われる羽根 水浴びに遣って来て猛禽類に襲われたのでしょう

  • 3月中旬になって日当たりの良い場所にフキノトウがようやく出現

  • やっと開花したミツマタの花

  • 雪の重みで折れたウラジロモミの樹皮が見事にかじられて

  • 太いケヤキの根の樹皮もかじられて

  • 企画懇談会で挨拶いただいた静岡大学 客員教授 増澤先生

ページの先頭へ戻る