自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏
今年は9月に入っても気温が高く、秋の始まりがなかなか感じられません。でも、草花は敏感に季節の移り変わりを感じ取っています。森の中ではちゃんと秋の花が咲き始めています。 銀白色の花はアキノギンリョウソウ、触ると痛いと感じる鋭い葉先の棘を持ったアズマヤマアザミ、烏帽子を被った貴人の横顔を想像させるアズマレイジンソウ、そしてお月見には欠かせないススキ。そんな花たちが咲いています。
アキノギンリョウソウ(和名はギンリョウソウモドキと言います)は葉緑素を持たない、菌従属栄養植物で、姿かたちはまったく似ていませんがツツジの仲間です。春に咲くギンリョウソウとは親戚関係です。花は俯いて咲きますが、実ができる頃になるとまっすぐ上を向くようになります。
花以外では、サンショウの実が赤く色づいて、とてもきれいです。夏前の香り豊かな青ザンショウの頃とは比べものにならない辛味をもっていて、麻婆豆腐の香りづけと辛味づけには最適です。
キノコたちも沢山見かけるようになりました。色鮮やかなオレンジ色がかった赤色のタマゴタケは、その色から森の中でとても目立ちます。逆に目立たないのは地味な黒色のテングノメシガイと言うキノコです。天狗が使うご飯シャモジになぞらえた名前のそのキノコは、形こそまったく似ていませんがチャワンタケの仲間です。スラッと背の高いキノコが見られます。これはツエタケの仲間です。ツエタケは詳しい分類が難しいのですが、写真に挙げたのはたぶんブナノモリツエタケだと思います。
こうして少しずつ季節は進んで、来月には秋たけなわとなることでしょう。
-
葉緑素のない菌従属栄養植物のアキノギンリョウソウ、春先に咲くギンリョウソウと違い花がずっと俯きです
-
葉先の棘が強いアズマヤマアザミ(東山薊)の花
-
ススキの花はイネ科の特徴をよく表わしています
-
真っ赤に色づいたサンショウの実、青ザンショウの時より辛味が数倍強くなっています
-
微笑ましい姿をしているアキノレイジンソウ(秋の伶人草)はトリカブトの仲間です
-
目立たなく変わった形の黒いキノコ、テングノメシガイ(天狗の飯櫂)
-
色鮮やかなタマゴタケが雨に濡れて傘がツヤツヤしています
-
柄がヒョロリと長くスラッとした姿は目立つブナノモリツエタケ
昨年以上に今年の夏は暑く、標高1,100mの「まなびの森」も例外ではありません。平地では連日猛暑が続いており、ここでも同様に暑い日々が続いています。
林床にスクっと立ち上がるのは黄緑色の花を咲かせるウバユリ、ピンク色の鮮やかな花をつけるのはツリフネソウ。そして、夏の終わりに咲く白い花はボタンヅル。夏は花が少ないながらも目を楽しませてくれる花々が咲きほこっています。
苔むした樹の幹にヒョロっと細長い先端がオレンジ色の目立つものがあります。そっと引っ張ってみて出てきたのは細い軸の先にカメムシがくっついています。冬虫夏草の仲間で、その名もカメムシタケです。今、この冬虫夏草の仲間を使って農薬を使わない害虫対策にしようという研究が進んでいるそうです。
森を歩いていると林床に目立つピンク色の細い棒状のものが生えています。先端が虫にかじられていたのが残念ですが、スッポンタケの仲間のキツネノエフデと言うキノコです。
ある日、フォレストアークの玄関前にアズマヒキガエルがのそのそと現れました。その顔つき、姿と動きはなんともほほ笑ましいではありませんか。
森で白い菊の花が見られるようになると長く暑かった夏もいよいよ終わりに近づいています。この白い菊の花はシロヨメナ、なぜだか分かりませんがシカが好まない為、森の中で増えている植物です。
ススキの穂も伸びて来て、秋はもうすぐそこまで来ています。
-
盛夏に咲くウバユリの花
-
鮮やかなピンク色の花が目立つツリフネソウはホウセンカの仲間です
-
苔むした木の幹のコケの間からヒョロッと伸びたオレンジ色の物体
-
引っ張り出してみるとカメムシから生えた冬虫夏草の仲間、カメムシタケだとわかります
-
ボタンヅルの花、晩夏に咲く花
-
ザトウムシを捉えて給餌しているクモ
-
独特の形をしたキツネノエフデはスッポンタケの仲間、その先端は虫にかじられています
-
白い菊の花はシロヨメナ、なぜかシカが食べない
-
フォレストアークの玄関に現れたアズマヒキガエル
キヨスミウツボが咲き、ヒメシャラもたくさんの花ガラが落ちてきていることで開花が分かる7月となりました。そんな中、なぜかギンリョウソウが大幅遅れの開花となっています。季節どおりの5月初旬にも花を咲かせたギンリョウソウでしたが、7月の暑い季節に花を咲かせたのはチョッと珍しいことでした。
毎年、神出鬼没な場所で花を咲かせるキバナノショウキランが今年も新たな場所で数株咲きました。咲いている場所は予測不可能で、最近では意外な場所を見つけるのが一つの楽しみとなっています。
同じく菌従属栄養の無葉ランであるツチアケビは食用菌であるナラタケから栄養をもらっています。菌学者の話では、「こっちに美味しいエサ(=栄養)があるよ~」とナラタケの菌糸を誘い込んで、逆にツチアケビがナラタケを栄養源にするという高度な技を持っているそうです。別の言い方をすると、ツチアケビがナラタケを釣り上げて食べちゃった、と言うことになります。
フォレストアークのすぐそばで小さな虫が羽化していました。成虫になりつつあるその姿は小さな1cm弱のセミに似たものでした。しばらく見ていて分りましたが、それはアワフキムシでした。木の若芽や草の茎の汁を吸って生きていますが、自分の排泄物が泡となり隠れ家としている小さな昆虫です。その羽化を見たのは初めてです。
7月下旬のある日、森を歩いていると高いところでたくさんのハチの羽音が聴こえ、足元には薄緑色がかった小さな白い花ガラがたくさん落ちていました。ちょうど、「まなびの森」の「主の樹(あるいは、長老の樹)」と呼ばれているシナノキの巨木のすぐそばです。そして、そのあたりに淡い甘い薫りが漂っていて、シナノキに花が咲いていました。シナノキの花の香を感じたのは2年前に初めて嗅いだ以来です。たくさんのハチはその花の香りに集まってきて吸蜜しているのです。
今年は『まなびの森』で静岡県の「森林環境教育指導者養成講座」の1講座が開催されました。県内各地からの受講生が1日『まなびの森』で「森林の基礎知識」、「森林エコツアーの実践」をフォレストアークでの座学と森の中での実技を通して、熱心に学んでいました。実は、筆者も今を遡ること6年前に同じ講座を受講しています。
下界は連日の猛暑続きですが、『まなびの森』も30℃越えにはならないもののシッカリ暑い夏となっています。
-
無葉緑素の寄生植物キヨスミウツボの花
-
たくさんのヒメシャラの落花(花ガラ)
-
ヒメシャラの可憐な白い花
-
7月に花を見かけるのは珍しいギンリョウソウ 似ても似つかない姿ですが、ツツジ科の寄生植物です
-
神出鬼没なキバナノショウキランは菌従属栄養の無葉ラン
-
ツチアケビも菌従属栄養の無葉ラン ナラタケから栄養をもらっています
-
アワフキムシの幼虫の隠れ家は自分で作る泡
-
アワフキムシの羽化
-
シナノキの落花 黄緑色のヘラ状のものは花の苞で、実ができた時にはこれがプロペラの役目を果たして種を遠くまで運んでいく
-
「森林環境教育指導者養成講座」の実技で講義中の農工大の吉川先生
-
同講座の「森林エコツアーの実践」で「千手観音ブナ」に集まる受講生