気候変動への対応

気候変動の緩和

再エネ100%の利用に向けたアプローチ

住友林業グループは、事業活動において使用する電力を100%再生可能エネルギーにするために、2019年より開始した「スミリンでんき」の活用や国内外の工場で太陽光発電システム導入などを検討しています。また、将来的には各国の制度を活用した多様な調達方法を検討しながら、再エネ100%を目指します。

国内使用電力に太陽光発電「スミリンでんき」を活用

住友林業は、2019年11月から住友林業及び住友林業ホームテックの住宅のオーナーを対象に、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)による買取期間が満了する住宅用太陽光発電の余剰電力買取と電力供給の代理販売サービスを行う「スミリンでんき」のサービスを開始しました。

この「スミリンでんき」を住友林業グループの国内電力に充当できるように取り組んでいます。「スミリンでんき」によりオーナーから購入した太陽光発電余剰電力を当社の事務所や展示場等で活用することで、RE100の取り組みを進めています。2022年12月時点における契約件数は3,061件で、2021年度から1,522件増加しました。また、2021年より近畿エリアの展示場にオーナーから購入した電力を供給しています(2022年12月時点の対象展示場38件)。今後、オーナーへの普及を加速させ、2023年中にすべてのエリアにおいて再生可能エネルギーの供給を目指します。

製造工場で再エネの利用を拡大

住友林業グループでは、製造工場から排出される温室効果ガスがグループ全体の排出量の約34%を占めています。 RE100達成に向けて、製造工場における省エネ活動の徹底、再生可能エネルギーの利用拡大が不可欠です。

住宅の内装部材の製造を行う住友林業クレストでは、鹿島工場で、2020年9月にPPA(Power Purchase Agreement)モデルによる太陽光発電を導入しました。太陽光発電以外の使用電力についてもトラッキング付き非化石証書を購入することで、2022年12月時点で、同社の鹿島工場と伊万里工場はRE100、静岡工場はRE50を達成しています。これらの取り組みにより、2022年度は、1,803t-CO2の排出量削減に貢献しました。住友林業グループの海外工場においても、太陽光発電の導入を推進、再生可能エネルギーを調達することを計画し、温室効果ガスの削減を目指します。

これからも、国内外の住友林業グループ製造工場で太陽光発電パネルの導入・拡大などを検討し、再生可能エネルギー比率を高めていきます。

※ 太陽光発電パネルの設置場所として、工場棟の屋根を発電事業者に貸し、発電した電力を買い取り自社消費するモデル

鹿島工場外観

鹿島工場外観

海外拠点における取り組み

住友林業グループで最も電力使用量が多い会社はニュージーランドのMDF(中密度繊維板)・単板・LVL(単板積層材)の製造・販売を行うネルソン・パイン・ インダストリーズ(NPIL)です。ニュージーランドは水力発電や地熱発電など再生可能エネルギーが大きな電源構成を占めており、2021年では約8割になっています。 2035年に再生可能エネルギー 100%にすると政府が公表しており、NPILもその時点で再生可能エネルギーの100%導入を見込んでいます。

その他の製造工場があるインドネシアやベトナムでは、東南アジア諸国で再生可能エネルギーの導入の機運が高まってきている他、 自社工場に太陽光発電設備の導入を検討しています。住宅事業を中心に展開する米国、豪州では、低コストで再生可能エネルギーの調達が可能になっていることに加え、十分な量の再エネ電力証書等が発行されているため、順次電力の切り替えなどを行っていく予定です。

再生可能エネルギー事業の推進

住友林業グループでは、建築廃材、林地未利用木材などをチップ化して燃料に利用するバイオマス発電、太陽光発電といった、再生可能エネルギー発電事業を進めています。2022年の発電実績は、合計48,782万kWh(石炭分含む)MWhで、2021年度比0.7%減少となりました。

2022年度
発電量による
CO2排出抑制効果

71,227 t-CO2e

※ 電力会社から電力を購入した場合と比較したCO2排出抑制量。また、主に北海道電力、東北電力のCO2排出係数を用いて計算

再生可能エネルギーによる発電量推移※1※2

再生可能エネルギーによる発電量推移

※1 木質バイオマス発電による発電量は住友林業連結子会社のみを対象とする

※2 2021年度以降の集計期間は各年1月~12月、2020年度の集計期間は4月~12月、2019年度の集計期間は 4月から翌年3月

木質バイオマス発電事業

住友林業グループは、主に建築廃材に含まれる木材を原料とするリサイクルチップや、製材に適さない材、森林に放置されてきた間伐材などの林地未利用木材を燃料用木質チップとして利用する木質バイオマス発電事業を展開しています。

木材を燃焼することで放出されるCO2は、木の成長過程で光合成により吸収された大気中のCO2であるため、木のライフサイクルの中では大気中のCO2を増加させません(カーボンニュートラルという考え方)。このため住友林業グループでは、木材の有効活用と CO2の増加抑制、さらには地域の森林環境整備など林業の振興に大きく貢献する事業として木質バイオマス発電事業に取り組んでいます。

住友林業グループは、2011年2月に建築廃材等を主燃料とした都市型の川崎バイオマス発電所(発電規模33MW)を稼働させ、この分野に参入しました。また、2016年12月には国内の林地未利用木材を主燃料とした発電規模 50MWの紋別バイオマス発電所、2017年4月には6.2MWの苫小牧バイオマス発電所、2018年 4月には 12.4MWの八戸バイオマス発電所、2021年6月には75MWの苅田バイオマス発電所の営業運転を開始しました。

2023年11月に75MWの杜の都バイオマスエナジー発電所が稼働すれば、住友林業グループが運営に参画する木質バイオマス発電所の発電規模は合計で約251.6MWとなり、約555千世帯分の電力を供給することになります。

今後は、これまでの木質バイオマス発電事業の経験を活かし、地域の特性や条件に適した再生可能エネルギー事業の展開を図ります。

紋別バイオマス発電所

紋別バイオマス発電所

紋別バイオマス発電所

八戸バイオマス発電所

住友林業グループの木質バイオマス発電事業

名称 事業地 発電規模 営業運転
開始時期
主な特徴
川崎バイオマス発電所
(住友共同電力株式会社、フルハシEPO株式会社との共同出資)
神奈川県
川崎市
33MW 2011年2月
  • 建築廃材を主燃料とするバイオマス発電設備としては国内最大規模
  • 首都圏近郊の建築廃材や廃パレットなどから生産されるリサイクルチップ、剪定枝などを利用
  • 都市型バイオマス発電所として、排煙脱硫装置、排煙脱硝装置、バグフィルターなどの環境設備を備え、川崎市の厳しい環境基準をクリア
紋別バイオマス発電所
(住友共同電力株式会社との共同出資)
北海道
紋別市
50MW 2016年12月
  • 主に発電所の半径75km圏内から調達する林地未利用木材などを隣接する工場等でチップ化し、燃料として利用
  • 一部にパームヤシ殻や補助燃料として石炭を利用
苫小牧バイオマス発電所
(三井物産株式会社、株式会社イワクラ、北海道ガス株式会社との共同出資)
北海道
苫小牧市
6.2MW 2017年4月
  • 燃料は全量北海道の林地未利用木材をチップ化し利用
八戸バイオマス発電所
(住友大阪セメント株式会社、東日本旅客鉄道株式会社との共同出資)
青森県
八戸市
12.4MW 2018年4月
  • 主に青森県三八・上北・下北地域の林地未利用木材、製材端材、周辺鉄道沿線の鉄道林の間伐材などをチップ化し、燃料として利用
  • 一部にパームヤシ殻も利用
苅田バイオマス発電所
株式会社レノバ、九電みらいエナジー株式会社、三原グループ株式会社との共同出資
福岡県
京都郡
75MW 2021年6月
  • 燃料は北米産のペレットとインドネシア産のパームヤシ殻を使用する他、九州北部の間伐材や林地未利用木材を利用
杜の都バイオマスエナジー発電所
株式会社レノバ、ユナイテッド計画株式会社、みずほリース株式会社、RenoDaパートナーズ合同会社による共同出資
宮城県
仙台市
75MW 2023年11月
  • 燃料は北米産を中心としたペレットとインドネシア産、マレーシア産のパームヤシ殻

※ 住友林業の連結子会社

太陽光発電事業

住友林業は、茨城県鹿嶋市に発電規模3.4MWの太陽光発電施設を保有しています。

一部の太陽光パネル架台には、主に国産のスギ材を用いたオリジナル木製架台を採用し、発電施設の環境負荷低減と木材の利用用途拡大に配慮しています。

2022年度の発電実績は、440万kWhです。

太陽光パネルと環境にも配慮した木製架台

太陽光パネルと環境にも配慮した木製架台

再生可能エネルギー事業の発電所所在地

林地未利用木材の活用推進

林地未利用木材とは、森林における製材に適さない立木または、間伐により発生する未利用の木材です。製紙用のパルプ需要は低迷していたものの、FIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)の導入に伴い、各地で木質バイオマス発電所が稼働しており、木質バイオマスの需要が増加しています。林地未利用木材を活用することで、再生可能エネルギーを推進するとともに、森林の価値を高める効果も期待できます。2022年は、住友林業グループの発電所で370千トンの林地未利用木材を活用しました。引き続き、林地未利用木材の効率的かつ安定的な集荷システムの構築に努めていきます。

国産材における
林地未利用木材の
利用量
(2022年)

370千トン

林地未利用木材

林地未利用木材

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の推進

日本における家庭部門のCO2排出量は増加傾向に歯止めはかかったものの、依然高い水準にあります。国は、2021年10月に閣議決定された「地球温暖化対策計画」や「第6次エネルギー基本計画」等において、 「2030年度以降新築される住宅・建築物について、ZEHZEB基準の水準の省エネルギー性能の確保※1を目指し、整合的な誘導基準・住宅トップランナー基準の引上げや、省エネルギー基準の段階的な水準の引上げを遅くとも 2030年度までに実施する」ことや 「2050年に住宅・建築物のストック平均でZEHZEB基準の水準の省エネルギー性能が確保されていることを目指す」政策目標を打ち出しました。

ZEHとは、高い断熱性能、省エネ設備機器、そして太陽光発電システム等の「創エネルギー」設備を組み合わせることで、年間の一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロ以下となる住宅です。

「持続可能な開発目標(SDGs)」の目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」や目標13「気候変動に具体的な対策を」だけでなく、目標3「すべての人に健康と福祉を」や目標12「つくる責任 つかう責任」等にも対応しており、 ZEH普及は持続可能な社会の実現に貢献するものです。

住友林業は以前より、再生可能な自然資源であり、生長の過程でCO2を吸収・固定する「木」を主要構造材に使用するとともに、風や太陽など自然の恵みを活かす独自の設計手法「涼温房(りょうおんぼう)」を取り入れ、一年を通して快適に暮らせる住まいを提供してきました。こうした「木の特性・自然の恵み」を活かすノウハウと、断熱性能の向上や省エネ設備の導入など「エネルギー消費を減らす」技術、創エネ・蓄エネ機器や HEMS※2など「エネルギーを賢く活かす」技術を融合し、家庭内のエネルギー効率を高めることで、居住時のCO2排出量の削減を図っています。

中期経営計画サステナビリティ編では、新築戸建注文住宅におけるZEH受注比率の目標を掲げており、前年度比で9.8ポイント上昇し、2022年度77.2%となりました。
新築住宅において、建物や開口部のさらなる断熱性能の強化、太陽光発電システムの搭載を基本仕様とし、 ZEHの普及を推進します。

※1 強化外皮基準への適合及び再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量を現行の省エネルギー基準値から20%削減

※2 Home Energy Management Systemの略。発電量や電気使用量を“見える化”する家庭用エネルギー管理システム

※3 Nearly ZEH、狭小ZEH Oriented、多雪ZEH Orientedを含む

新築戸建注文住宅における
ZEH受注比率実績※3
(2022年度)

77.2%

断熱性に優れた木の家

木の熱伝導率を「1」とすると、コンクリートは約13倍、鉄は約440倍もあります。木は熱を伝えにくい断熱性に優れた素材です。さらに、住友林業では独自の基準による、高い性能の断熱材「グラスウール(高性能品)24K」を使用しています。

素材の熱伝導率比較

素材の熱伝導率比較

住友林業独自基準の断熱材

住友林業独自基準の断熱材

「360゜TRIPLE(トリプル)断熱」の標準採用

住友林業では、戸建注文住宅(耐火仕様を除く)の断熱性能を強化した「360゜TRIPLE断熱」を標準採用しています。高性能な「断熱材」に加え、断熱性の高い「構造材」と「窓」で建物全体を包み360°しっかり断熱し、経済的で快適な暮らしを実現します。

「360゜TRIPLE断熱」は夏涼しく、冬暖かく、省エネルギー性能を高めた住まいです。国が進めるBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の最高ランクである5つ星に標準で対応しています。

住友林業では戸建注文住宅についてBELSを全棟で申請しています。BELSは新築・既存の建築物の省エネ性能を第三者評価機関が評価し認定する制度で、建物の省エネ性能、資産価値を示す指標となります。BELSの全棟申請は大手ハウスメーカーでは初めての取り組みです。 2022年度において、BELS認証率(本体着工時)は98.4%となりました。断熱性能を強化した住友林業の住宅は、BELSの評価書に裏付けされた確かな安心と快適さをお届けします。

※ 国土交通省が定めた「建築物の省エネ性能表示ガイドライン(建築物のエネルギー消費性能の表示に関する指針)」に基づく第三者認証制度の一つ。制度運営主体は一般社団法人 住宅性能評価・表示協会。省エネルギー性能を客観的に評価し、5段階の星マークで表示する。「Building-Housing Energy-efficiency Labeling System」の略称

断熱性に優れたガラスを採用

住まいの中で、一番熱損失が大きいのは窓です。夏は窓から入る熱を遮断し、冬は室内の暖気が窓から逃げないよう断熱することが大切です。住友林業では、もっとも熱のロスが大きい窓には、「アルゴンガス入りLow-E複層ガラス」を採用しています。これは複層ガラスの間に、空気より熱を伝えにくい「アルゴンガス」を封入し、さらに特殊金属膜をガラスにコーティングしたものです。優れた断熱・遮熱性で、夏は窓から入る熱を遮断し、冬は室内の暖気が窓から逃げないようにしています。

Low-Eガラスによる断熱イメージ

Low-Eガラスによる断熱イメージ

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W発電

住友林業では、太陽光発電システムとともに、家庭用燃料電池「エネファーム」の設置も推奨しています。このW発電により、毎日の生活に必要な電気を自宅でつくることができます。さらにHEMSで住まいのエネルギー消費量を上手に管理することで、ゼロ・エネルギーの家(ZEH仕様)を実現します。

環境配慮機器の搭載率推移(受注棟数ベース)※1 ※2

2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
太陽光発電システム 56% 57% 68.9% 78.1%
エネファーム 36% 27% 25.5% 20.5%
エコワン※3 17% 15% 19.4% 24.4%
環境配慮機器搭載率 75% 70% 78.2% 84.6%

※1 2020年度の集計期間は4月~12月

※2 2019年度の集計期間は4月から翌年3月

※3 電気・ガスのハイブリッド給湯・暖房システム

「LCCM住宅」を販売開始

住友林業は、2022年4月、優れた断熱性能や高性能な設備機器、大容量太陽光発電システムなどの創エネルギー機器を駆使した環境フラッグシップモデル「LCCM住宅」の販売を開始しました。

LCCM住宅とは、建設時、居住時、解体時の省CO2に取り組み、さらに太陽光発電などを利用した再生エネルギーの創出により住宅のライフサイクル全体でCO2収支をマイナスにする住宅です。住友林業の「LCCM住宅」は、木造住宅のため原料調達から建設までのCO2排出量が少ない上、再生可能なバイオマス燃料を乾燥工程に活用した国産材を構造躯体に採用することで、より多くのCO2を削減します。また、住友林業独自のBF(ビッグフレーム)構法により将来の間取り変更にも柔軟に対応可能で、建設、改修、解体時トータルでCO2排出量を抑え、太陽光発電による再生エネルギー活用、光と熱をコントロールする設計の工夫でLCCMを実現しています。強固な構造躯体は在来工法に比べ約2割多く炭素を固定し、長期に炭素を固定し続け脱炭素社会に貢献します。

さらに、2022年10月には、森を育てる家「環境貢献度プレゼンシート」による提案を開始しています。設計段階の「炭素固定量」、「再植林相当面積」を邸別に算出できるようにし、環境貢献度の見える化を図っています。

※一般社団法人日本サステナブル建築協会作成「LCCM住宅部門の基本要件(LCCO2)適合判定ツール」により算出

LCCM住宅モデルハウス(米子展示場)

賃貸集合住宅の全棟ZEH化

住友林業は、賃貸集合住宅「Forest Maison(フォレスト メゾン)」全棟でZEH-M(ゼッチマンション)※1化を推進し、快適な室内環境と大幅な省エネ性能を実現しています。国が進めるBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の最高ランク5つ星に対応する仕様を標準とし、省エネ性を高めたZEH-Mを全棟で取得します。また、太陽光発電の搭載も推進し、生活時に排出するCO2を削減します。

「Forest Maison」のZEHマンションは住まいの断熱性能を大幅に高め、高効率な設備システムを導入して快適な室内環境を保ち、共用部を含む建物全体の一次エネルギー消費量の20%以上を削減※2する、ZEH-M Orientedの基準以上を目指します。

※1 Net Zero Energy House Mansion(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンション)の略。住まいの断熱性・省エネ性能を上げ、太陽光発電などでエネルギーを作り、年間の一次消費エネルギー量(空調・給湯・照明・換気)の収支をプラスマイナス「ゼロ」にする集合住宅
国が定める集合住宅のZEH基準で、一次エネルギー消費量の削減率に応じて、「ZEH-M」、「Nearly ZEH-M」、ZEH-M Ready」、「ZEH-M Oriented」の4区分に分類される

※2 2016年省エネ基準による「暖房」「冷房」「換気」「照明」「給湯」の基準一次エネルギー消費量との比較

ZEHマンションの事例

リフォームによる性能向上

住友林業ホームテックでは、省エネリフォームを推進しています。断熱性能の向上と合わせて、省エネ効率の高い設備機器の設置を提案し、暮らしの中で消費するエネルギーを減らすことで、環境負荷低減を実現するとともに、生涯光熱費を減らす新しい暮らし方を提案しています。断熱改修を行うことで、ヒートショックによる健康面でのリスクを低減させることもできます。

また、昨今、断続的に発生する地震への不安から、安心・安全な住まいづくりのニーズが高まっており、耐震・構造補強工事を積極的に進めています。

「断熱」「省エネ」「耐震」各性能を向上させることで、「既存住宅の長期優良住宅化」や「長期優良増改築認定基準」適合に積極的に取り組んでいます。

2022年度の実績

住友林業ホームテックでは、2024年度を目標年度とした中期経営計画サステナビリティ編2024において、「環境配慮型リフォーム受注率向上」を目標に掲げました。

2022年度は、一般の住宅(「住友林業の家」のオーナー以外)における耐震工事・構造補強工事・断熱改修工事・スマート商材設置工事の4つの合計受注割合70%を目標とし、実績は64.6.%となりました。
一方、「住友林業の家」における耐震工事・外装工事・断熱改修工事・スマート商材設置工事の4つの合計受注割合65%を目標とし、実績は60.7%となりました。

制震ダンパーキャンペーンなどを通じてこれらの工事を積極的に提案するとともに、スマート商材については、太陽光発電システムを搭載されている「住友林業の家」のオーナーを対象として、「太陽光+蓄電池(iedenchi-NX)」のレジリエンスリフォームのメリットをお伝えしています。また、光熱費の高騰により、卒FITを迎えるオーナーへ、自家発電・自家消費の観点から、環境配慮商品の提案を進めています。

環境配慮型リフォームは、自然災害時の備えにもなり、今後ますますニーズが高まると考えています。

※ 太陽光発電システムや蓄電池、エネファームなど

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住宅・建築事業におけるカーボンストック

木は製品となってもCO2を炭素として保持し続けるため、木造住宅を建てることは、都市に森をつくることだと言われています。2022年度の住宅建設や建築事業に使用された木材によるカーボンストック※1は国内で19.7万t-CO2になりました。住友林業グループは、山林や都市のカーボンストックを増やし、脱炭素社会に貢献しています。

※1 戸建注文住宅・賃貸住宅・戸建分譲住宅・建築事業で使用した実際の木材使用量を樹種別に分け、各々の比重を基に炭素含有量を算出し、CO2固定量を計算

2021年度の国内の住宅建設や木化事業に使用された木材によるカーボンストック

2022年度の国内の住宅建設や建築事業に使用された木材によるカーボンストック

海外における環境配慮型住宅の販売

豪州のヘンリーは、省エネ性能基準のエナジー・レイティング※15スターを他社に先駆けて自社標準仕様とするなど、同国住宅業界の省エネ性能向上の取り組みをけん引してきました。2008年に住友林業グループに加わった後は環境への取り組みをさらに加速させ、同国における大手ビルダーとして初の一般顧客向けゼロ・エミッション・ハウス※2の開発を実現させるなど、環境負荷低減のための様々な取り組みを行っています。

2022年8月、豪大手ビルダーで初めて全ての戸建注文住宅に太陽光パネルを標準搭載しました。太陽光発電により創出したエネルギーで日常生活の消費エネルギーを賄い、さらにオール電化を標準仕様とし、光熱費を最大75%節約するなどにより、「暮らすときのCO2排出量」が最大100%削減可能となります。

※1 豪州における建物内の冷暖房に対するエネルギー負荷を評価する指標で、断熱材や窓、建物の種類や大きさ、向き、立地する気候帯が評価項目。現在は6スターが標準仕様

※2 従来の住宅より70%以上の省エネ効果が期待できる環境配慮型住宅

換気システム開発の様子

太陽光パネルを搭載した住宅

CO2の見える化

研究開発

住友林業は、木造建築や木質材料のもつ価値を明らかにし、さらにその価値を高めて脱炭素社会の実現に寄与していくため、建物の構造種別のCO2排出量の比較検討や木材の炭素固定量の評価を建築計画の段階において簡便にできるよう、データの整備・計算手法の確立に向けて研究開発に取り組んでいます。

また、2019年に竣工した「筑波研究所 新研究棟」において、屋上の太陽光パネルによる創エネと再生可能エネルギー燃料である木質ペレットを利用した空調システム、昼光利用・自然換気などの自然エネルギー利用により、運用時のCO2排出量の削減を実現しており、効果検証を引き続き実施することでさらなる削減を目指します。

木造建築物の炭素貯蔵量を推定

東京農工大学は、過去およそ50 年間に民間企業が建設した木造建築物の炭素貯蔵量の推定方法に関する研究成果をオープンアクセスジャーナル「Scientific Reports」で発表しました。

2011年に開催された第17回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP17)で、炭素量変化を各国の温室効果ガスの吸収量または排出量として計上することが合意された、「伐採木材製品」(Harvested Wood Products、以下HWP)は、森林から伐採された後も炭素貯蔵機能を持つため、その有効活用は気候変動緩和へ重要な施策となります。

HWPを有効活用するためには、まずその炭素貯蔵量を正確に把握する必要があり、本研究ではHWPの用途の中でも最も多くの炭素を貯蔵する木造建築物を対象とし、企業が建設した建築物におけるHWPの炭素貯蔵量の推定方法を検討しました。

建築物のデータを住友林業が提供し、両者が共同で推定手法の検証をしました。本研究の成果により、木造建築物の炭素貯蔵量をより高い精度で把握、推測することができます。また、住友林業の木造住宅は長期にわたり炭素を貯蔵することが明らかになりました。

※ 京都議定書第二約束期間においては、HWPの炭素量の変化を評価し計上するルールが認められている(炭素貯蔵効果)。HWPの算定ルールが適用されるのは、国内の森林のうち「森林経営」を行っている育成林から生産された「製材」、「木質パネル」、「紙」

建てるときのCO2排出量を見える化

住友林業は、建物のCO2排出量等を見える化するソフトウェア「One Click LCA」の日本単独代理店として2022年8月に日本版の販売を開始しました。

「 One Click LCA」は欧州を中心に130ヵ国で利用され、国際規格ISOや世界の50種類以上のグリーンビルディング認証に対応したソフトウェアです。建設にかかる資材調達から加工、輸送、建設施工、改修、廃棄時のCO2排出量(建てるときのCO2排出量)を精緻に算定できます。

全世界のCO2排出量に占める建設部門の割合は約37%※1と言われています。そのうちの約70%が暮らすときのCO2排出量(オペレーショナル・カーボン)で、残り30%が建てるときのCO2排出量(エンボディド・カーボン)です。暮らすときのCO2排出量は、ZEHやZEBの普及により削減が進んでおり、今後は建てるときのCO2排出量の削減が喫緊の課題です。 

住友林業は、2023年2月に、木材・建材メーカー向けに環境認証ラベルEPD※2取得推進事業と、デベロッパー・ゼネコン・設計事務所向けに「One Click LCA」算定受託事業を開始しました。

当社は、「One Click LCA」の普及を通じて、日本の建設業界の脱炭素設計を推進していきます。

※1 出典 global alliance for building and construction(2021)

※2 資源採取から廃棄までの、製品の全ライフサイクルにわたるCO2排出量を見える化したISO準拠の環境認証ラベル

世界の産業別CO2排出率

世界の産業別CO2排出率

「One Click LCA」での算定事例

「One Click LCA」での算定事例

※ 出典:上記グラフは、平成28年3月林野庁公表の「平成27年度 木材利用推進・省エネ省CO2実証業務報告書」の公表データを元に「One Click LCA」を使って当社が独自に算定した結果

投資における見える化

住友林業は、事業における投資の可否判断の際に温室効果ガス排出量を判断基準の一つにするため、インターナルカーボンプライシングの導入を検討しています。2023年7月からの運用を目指しています。

脱炭素化支援機構に出資

住友林業は、地球温暖化対策の推進に関する法律に基づき2022年10月に設立された株式会社脱炭素化支援機構(JICN)に出資しました。

JICNは国の財政投融資と民間からの出資を資本金としてファンド事業を展開し、脱炭素に資する事業への投融資を通じて民間企業の脱炭素投資を促します。住友林業グループはJICNの活動趣旨に賛同するとともに、脱炭素関連市場の成長が当社グループの事業機会拡大に繋がるものと考え、JICNへの出資を決定しました。当社グループの将来的な事業機会の創出に向け、JICNが支援する脱炭素分野の先進事例に関する情報・知見の蓄積も図っていきます。