自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏
■9月管理人日記
標高1,125mの「まなびの森」では秋の訪れが早いです。ツクツクホウシが鳴き始め、ススキが穂を出し、ヤマシャクヤクの大きな実が割けて色鮮やかな果肉と種子を見せています。ギンリョウソウが今年2回目の花を咲かせてると思っていましたところ、実は種類が違うそうです。アキノギンリョウソウとか、ギンリョウソウモドキと言う種類だそうです。そう言えば、花の形態がギンリョウソウとは違います。葉緑素のない半透明な花の群落はうつむき加減で少し不気味さを漂わせています。
夏の間は葉を落としていたオニシバリが新芽を芽吹かせ始めました。冬の間は葉をつけ、夏に落葉すると言う珍しい冬緑性落葉樹です。ジンチョウゲ科のこの木は春に黄色の小さな花を咲かせます。花の形と微かな花の香りもジンチョウゲに似ています。落葉広葉樹の森で他の樹木が葉を落としている冬の間にセッセと光合成して栄養を貯めているのかと思うとなんだかいじらしいような、愛おしさを感じます。
苔むした倒木に色鮮やかなマスタケが生えました。サルノコシカケの仲間で、その鮮やかな赤みがかったオレンジ色が魚の鱒(マス)を連想させることでついた名前で、出始めの軟らかいものは食用になるそうです。
9月下旬から再び小学生対象の自然体験教室が始まり、社員ボランティア活動も始まりました。
梅雨前から続いていた高い湿度で霧がよく発生していましたが、カラッとした爽やかな空気に包まれて霧もめっきり少なくなり富士山もその美しい姿をよく見せてくれるようになりました。
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朝日をうけて光り輝くススキの穂
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ヤマシャクヤクの実
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その莢が割けて色鮮やかな果肉と種が現れる
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秋の訪れと共に新緑となるオニシバリ
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秋に咲くアキノギンリョウソウ
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苔むした倒木に生えた色鮮やかなマスタケ(鱒茸)
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秋の自然体験教室が始まりました
■8月管理人日記
例年になく長い梅雨がやっと明け、「まなびの森」にも本格的な夏が訪れました。そして、ヒグラシが鳴きはじめました。私にとっては初めての「まなびの森」での夏ですので、これが普通なのか、異常なのか判断がつきかねます。しかし、標高1,125mに位置するこの場所は平地と比べて気温は6~7℃低いです。
さてそんな中、静岡の民放テレビ局が「まなびの森」の巨樹を紹介するコーナーの取材に来ました。「まなびの森」の長老とも言えるシナノキの巨木、大ケヤキ三兄弟などを紹介していただきました。
クロアゲハが苔むした地面で水を吸い、メタリックな輝きの美しいオオセンチコガネが飛んできたり、夏本番な雰囲気です。先月紹介したツチアケビは8月末には早くもソーセージをぶら下げたような赤い実を付け、ススキも穂を伸ばしはじめました。
クロ、ミヤマカラス、モンキなど数種類のアゲハ蝶や蜂たちがクサギの花の蜜を吸いに飛び交っています。クサギの花は辺り一面に独特の甘い薫りを漂わせています。晩夏の薫りとも言えるでしょう。
夏至のころと比べると、日が落ちるのも1時間ほど早くなり、早くも秋の気配が漂いはじめました。
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「まなびの森」収録風景 シナノキにて
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「まなびの森」の長老ともいえるシナノキ
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大ケヤキ3兄弟 手前に2本、左奥にもう1本
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苔むし地面の水を吸いにやってきたクロアゲハ
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飛来したオオセンチコガネの1種 メタリックの輝き
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ツチアケビの実 先月紹介した花とは別の株です
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辺り一面独特の甘い薫りを漂わせるクサギ 薫りに誘われてたくさんの蝶や蜂が飛来して蜜を吸いにきます。
■7月管理人日記
2ヶ月近くに及んだ今年の長梅雨がやっと7月28日に明けました。多雨と日照不足のせいでしょうか、毒があるので鹿が食べないために「まなびの森」でも林床にたくさん生えているバイケイソウが今年は花もつけないまま萎れ枯れてしまいました。去年と比べて雨量は1.3倍、逆に日射量(積算)は6割と言う7月でした。
そんななか、ちょっと珍しい植物たちが見られました。葉緑素を持たず、従属栄養に頼る植物たちです。白いギンリョウソウや熱帯雨林の地表に咲く世界最大の花として有名なラフレシアは良く知られていますが、「まなびの森」にもそういう植物たちがたくさんあります。キヨスミウツボ、シャクジョウソウ、ランの仲間のツチアケビやキバナノショウキランなどです。
また、平地より1ヶ月遅れでヒメシャラもたくさん花をつけました。大きく生長してからやっとたくさんの花をつけるようで、花が咲いている姿はなかなか見られませんが、地面にたくさんの花ガラが落ちているのがなんとも綺麗です。ヒメシャラはツルツルとした木肌で、シラカバとアオダモと合わせて3大木肌美人ともいうようです。
梅雨の晴れ間にはアサギマダラがヒヨドリバナの蜜を吸いに訪れ、マタタビは花が咲いたと虫たちに知らせるために葉の一部を白くしています(葉の表面に空気をためて隙間ができて白く見える)。
多様な生き方をする植物が多いと言うことは「まなびの森」が豊かな自然に覆われている一つのバロメーターだと言えるのではないでしょうか。
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キヨスミウツボ アジサイの仲間の根に寄生
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シャクジョウソウの花 葉緑素がない従属栄養植物
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ツチアケビの花 ランの仲間でナラタケと言うキノコと共生している
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ツチアケビの花をアップに ランの仲間だとよく判ります。
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ヒメシャラの花と綺麗な幹 辺り一面が白くなるほど落ちている。
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アサギマダラがヒヨドリバナの蜜を吸っている
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マタタビの白い花 葉の表面が白く変色して、虫たちに開花をアピール