日本銀行が2024年3月の政策決定会合で「マイナス金利」を解除し、約17年ぶりの利上げとともに継続してきた「イールドカーブコントロール」をやめました。
この日銀の金利政策が住宅ローンの今後の金利にどのような影響を与えるのか、多くの人が関心を持っています。
今回のコラムでは、この日銀の金利政策と住宅ローンの金利との関係を紹介します。
公開日:2024.06.14
日本銀行が2024年3月の政策決定会合で「マイナス金利」を解除し、約17年ぶりの利上げとともに継続してきた「イールドカーブコントロール」をやめました。
この日銀の金利政策が住宅ローンの今後の金利にどのような影響を与えるのか、多くの人が関心を持っています。
今回のコラムでは、この日銀の金利政策と住宅ローンの金利との関係を紹介します。
マイナス金利の解除とは、これまでマイナスだった「無担保コール翌日物レート」の金利誘導ゾーンを0~0.1%にする金利政策の変更です。
無担保コール翌日物レートとは、銀行間でお金を1日だけ貸し借りする際の金利です。
日銀はこの金利が指定された範囲内に収まるように毎日介入しています。
例えば、給料日や手形や売掛金の決済が集中する日には、多くの銀行から大量の資金が引き出され、結果として「無担保コール翌日物レート」の金利は高くなります。
このような場合、日銀は資金を翌日物市場に供給して金利を指定されたゾーンに誘導します。
逆に銀行の資金が余剰になると、無担保コール翌日物レートの金利は低下します。
そのため、日銀は資金を吸い上げて金利を誘導ゾーン内に保つよう調整します。
「イールドカーブコントロール」とは、10年国債の利回りをコントロールする金融政策です。
日銀は、日本の景気の力が弱いと判断し、この政策を続けてきました。
今回の政策決定会合で、このイールドカーブコントロール、つまり10年国債の利回りのコントロールを状況に応じて介入するという柔軟な姿勢でやめることを決定しました。
住宅ローンの金利には、「変動金利型」と「固定金利型」があります。
「固定金利型」には、住宅金融支援機構が民間金融機関と提携して提供する「フラット35」に代表される「全期間固定金利タイプ」と、固定期間が3年、5年、10年などに設定され、その期間終了後は変動金利または固定金利を選択できる「固定金利選択タイプ」があります。
住宅金融支援機構の住宅ローン利用者実態調査(2023年10月調査)によると、「変動金利型」を利用した人が全体の74.5%、「固定期間選択型」を利用した人が18.3%、「全期間固定型」を利用した人が7.2%で、7割以上の人が「変動金利型」を選択しているのが現状です。
住宅ローンの金利は日銀の政策金利の影響を受けます。
「変動金利型」と「固定金利型」の適用金利を比べると、「変動金利型」の方が低くなりがちです。
これは、「変動金利型」が半年ごとに金利の変更があり、住宅ローンを利用する人が金利の上昇リスクを負うためです。
一方、「固定金利型」は、固定期間中は金利が変動しても住宅ローンの適用金利は変更されないため、金利の上昇リスクは金融機関が負います。
結果として、「固定金利型」の金利は高く設定される傾向があります。
一般的に日銀が政策金利として短期金利をコントロールしている「無担保コール翌日物レート」が上昇すると、銀行はその影響で預金金利を高く設定する傾向があります。
銀行は預金で得た資金の一部を住宅ローンの融資の資金にあてており、預金金利が上昇すると、住宅ローンの金利も上昇するのが一般的な傾向です。
住宅ローンの金利決定方法は以下の通りです。
① 基準となる金利の指標を参照して「基準金利(店頭金利)」を設定する
② 住宅ローンの審査によって金利優遇幅を決定する
③ 基準金利から金利優遇幅を差し引き、実際の適用金利を決定する
住宅ローンの金利の見直しに影響する金利を「変動金利型」と「固定金利型」の住宅ローンに分けて説明します。
【変動金利型住宅ローン】
変動金利は「短期プライムレート」と呼ばれる金利を指標にしています。
「短期プライムレート」とは金融機関が企業に短期資金を融資する際の最優遇貸出金利で、日銀の政策金利に連動しています。
金融機関の多くは、「短期プライムレート」に1%を加算して、変動金利型住宅ローンの基準金利(店頭金利)を設定しています。
【固定金利型住宅ローン】
固定金利は、国債市場で取引される10年国債の利回りを指標にしています。
国債は将来の経済動向等を予測して市場で取引されます。
例えば、株式などのリスク性の高い金融資産の運用益が上昇すると予測されれば、安定運用の債券は売られる傾向があり、逆に下落すると予測されれば買われる傾向になります。
日銀は日本国内の経済実態を見て政策金利を決定しています。
変動金利型住宅ローンの金利は現在の景気に影響され、好景気となれば、日銀は政策金利を上昇させる方向に政策の舵を切ります。
その結果として住宅ローンの変動金利は上昇します。
一方、固定金利型住宅ローンの金利は、国債市場で取引される10年国債の利回りを基準にしており、日銀のコントロールではなく、市場の動向によって決まるため、将来の経済状況の予測に影響されます。
住宅購入の資金を検討する際は、住宅ローンに影響する金利政策、金利動向にも注視してみましょう。