マイホームは取得した後に長い期間所有し続けることが想定される不動産ですが、長いライフステージの過程では、マイホームを贈与、売却、賃貸、相続などのケースに遭遇することも考えておく必要があります。
そのような場合は、贈与、売却、賃貸、相続などのそれぞれに、税制上の優遇措置があります。
今回のコラムでは、その中から夫婦間で居住用不動産を贈与したときの「おしどり贈与」(贈与税の配偶者控除)を紹介します。
夫婦間の居住用不動産の
「おしどり贈与」(贈与税の配偶者控除)
公開日:2025.06.23
- 贈与税
- 配偶者控除

居住用不動産の「おしどり贈与」(贈与税の配偶者控除)とは
居住用不動産の「おしどり贈与」(贈与税の配偶者控除)とは婚姻期間が20年以上の夫婦の一方が配偶者に居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭を贈与した場合、贈与税の申告をすることにより基礎控除額110万円のほかに最高2,000万円までの配偶者控除が使える特例です。
基礎控除と配偶者控除が併用できるので、合計での最大2,110万円の贈与を非課税にすることができます。
基礎控除と配偶者控除が併用できるので、合計での最大2,110万円の贈与を非課税にすることができます。
「おしどり贈与」(贈与税の配偶者控除)の特例の適用を受けるための要件
この特例を受けるためには、次の要件を満たすことが必要になります。
1. 婚姻期間が20年以上の夫婦間で贈与が行われること
💡ここがポイント💡
婚姻期間は、婚姻届けを出した日から贈与を受けた日までの期間で計算し、1年未満の端数は含みません。
例えば、婚姻期間が19年11か月の場合は、「おしどり贈与」は適用できません。
また、婚姻期間に内縁関係や事実婚の期間は含まれません。
2. 配偶者から贈与された財産が居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭であること
💡ここがポイント💡
夫婦の一方が登記上の所有者になっているマイホームを共有名義にする場合は、最大で2,110万円まで贈与額を非課税にできます。
例えば、マイホームを所有していない夫婦が新たに自宅を取得する場合、共有名義にするために妻が拠出する金銭を夫が負担しても最大2,110万円までの贈与額は非課税になります。
3. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた人が住んでいて、その後も引き続き住む見込みがあること
💡ここがポイント💡
「居住用不動産」とは、専ら居住の用に供する土地もしくは土地の上に存する権利または家屋で国内にあるものをいいます。
土地は所有権だけでなく、借地権も対象になります。
個人事業を営んでいる店舗兼住宅を贈与した場合も、居住用部分は「おしどり贈与」を使うことができます。
4. 同じ配偶者からの「おしどり贈与」は、一生に一回しか適用を受けることができない
1. 婚姻期間が20年以上の夫婦間で贈与が行われること
💡ここがポイント💡
婚姻期間は、婚姻届けを出した日から贈与を受けた日までの期間で計算し、1年未満の端数は含みません。
例えば、婚姻期間が19年11か月の場合は、「おしどり贈与」は適用できません。
また、婚姻期間に内縁関係や事実婚の期間は含まれません。
2. 配偶者から贈与された財産が居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭であること
💡ここがポイント💡
夫婦の一方が登記上の所有者になっているマイホームを共有名義にする場合は、最大で2,110万円まで贈与額を非課税にできます。
例えば、マイホームを所有していない夫婦が新たに自宅を取得する場合、共有名義にするために妻が拠出する金銭を夫が負担しても最大2,110万円までの贈与額は非課税になります。
3. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた人が住んでいて、その後も引き続き住む見込みがあること
💡ここがポイント💡
「居住用不動産」とは、専ら居住の用に供する土地もしくは土地の上に存する権利または家屋で国内にあるものをいいます。
土地は所有権だけでなく、借地権も対象になります。
個人事業を営んでいる店舗兼住宅を贈与した場合も、居住用部分は「おしどり贈与」を使うことができます。
4. 同じ配偶者からの「おしどり贈与」は、一生に一回しか適用を受けることができない
「おしどり贈与」の贈与税の申告に添付する書類
「おしどり贈与」の贈与税の申告書に、次の書類を添付する必要があります。
・財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の謄本または抄本
・財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し
・居住用不動産の登記事項証明書その他の書類で贈与を受けた人がその居住用不動産を取得したことを証するもの
・金銭ではなく居住用不動産の贈与を受けた場合は、その居住用不動産を評価した評価明細書などの書類
ここからは、実際に「おしどり贈与」をした場合、どのようなメリットがあるのかを見ていきます。
・財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の謄本または抄本
・財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し
・居住用不動産の登記事項証明書その他の書類で贈与を受けた人がその居住用不動産を取得したことを証するもの
・金銭ではなく居住用不動産の贈与を受けた場合は、その居住用不動産を評価した評価明細書などの書類
ここからは、実際に「おしどり贈与」をした場合、どのようなメリットがあるのかを見ていきます。
「おしどり贈与」は相続税の対策になる
・「おしどり贈与」で夫婦どちらかの財産を一方に贈与することは、相続税の対策になります。
仮に、夫の方が妻より財産が非常に多い場合、夫が亡くなったときに、妻にかかる相続税の負担が大きくなってしまいます。
「おしどり贈与」を使うと、財産が多い配偶者から少ない配偶者に最高2,110万円分の財産を非課税で一度に移すことができるので、財産が多い配偶者が亡くなった際もう一方にかかる相続税の負担を減らせます。
・「おしどり贈与」は、相続開始前7年以内の生前贈与加算が不要です。
生前贈与は、相続税を計算する際、亡くなった人から受けた贈与を相続財産に加算する制度です。
2024年1月以降の贈与から、加算される期間が相続開始前3年以内から7年以内になりました。(2025年5月時点)
「おしどり贈与」は、この生前贈与の加算の適用外なので、一般的な贈与よりも相続税が少なくできる効果があります。
💡ここがポイント💡
相続税には、「配偶者の税額の軽減」があります。
「配偶者の税額の軽減」とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。
(1) 1億6千万円 (2) 配偶者の法定相続分相当額
仮に、夫の方が妻より財産が非常に多い場合、夫が亡くなったときに、妻にかかる相続税の負担が大きくなってしまいます。
「おしどり贈与」を使うと、財産が多い配偶者から少ない配偶者に最高2,110万円分の財産を非課税で一度に移すことができるので、財産が多い配偶者が亡くなった際もう一方にかかる相続税の負担を減らせます。
・「おしどり贈与」は、相続開始前7年以内の生前贈与加算が不要です。
生前贈与は、相続税を計算する際、亡くなった人から受けた贈与を相続財産に加算する制度です。
2024年1月以降の贈与から、加算される期間が相続開始前3年以内から7年以内になりました。(2025年5月時点)
「おしどり贈与」は、この生前贈与の加算の適用外なので、一般的な贈与よりも相続税が少なくできる効果があります。
💡ここがポイント💡
相続税には、「配偶者の税額の軽減」があります。
「配偶者の税額の軽減」とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。
(1) 1億6千万円 (2) 配偶者の法定相続分相当額
「おしどり贈与」を使えば、自宅を売却したとき不動産譲渡所得税を少なくできる
「おしどり贈与」で、例えば夫が所有している自宅の一部を妻に贈与すると、自宅を夫婦の共有名義にすることができます。
住み替え等で自宅を売却する場合、売却益に対しての不動産譲渡所得として所得税と住民税の負担が生じます。
売却する自宅が共有名義の場合は、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を夫婦それぞれで使うことができるので、合計で最高6,000万円を譲渡益から控除することがきます。
住み替え等で自宅を売却する場合、売却益に対しての不動産譲渡所得として所得税と住民税の負担が生じます。
売却する自宅が共有名義の場合は、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を夫婦それぞれで使うことができるので、合計で最高6,000万円を譲渡益から控除することがきます。
「おしどり贈与」は、自宅を賃貸にした場合の不動産所得の税金対策になる
「おしどり贈与」で自宅を夫婦で共有した後に、その自宅を賃貸した場合は、不動産所得の課税を少なくできるメリットがあります。
不動産所得がある場合は確定申告をすることになりますが、不動産が共有名義の場合は、所有者の各々が不動産所得を持ち分に応じて案分した金額で確定申告することになります。
この場合は、各所有者が、基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除などを使うことができるので、所有者が一人のときよりも全体での税金を少なくすることができます。
夫婦の場合は、夫と妻がそれぞれ58万円の基礎控除を使えるのはメリットです。
不動産所得がある場合は確定申告をすることになりますが、不動産が共有名義の場合は、所有者の各々が不動産所得を持ち分に応じて案分した金額で確定申告することになります。
この場合は、各所有者が、基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除などを使うことができるので、所有者が一人のときよりも全体での税金を少なくすることができます。
夫婦の場合は、夫と妻がそれぞれ58万円の基礎控除を使えるのはメリットです。
残された配偶者が自宅に住み続けることができる
「おしどり贈与」には、税金面だけではなく、残された配偶者がそのまま自宅に住み続けることができるメリットがあります。
「おしどり贈与」で配偶者に自宅の権利を移しておくことで、相続が発生したときに相続の対象となる自宅は、配偶者に「一部所有権がある不動産」になります。
そのため、遺産分割の際に自宅に住み続ける権利を主張できます。
💡ここがポイント💡
2018年の民法改正で「配偶者居住権」が創設され、終身あるいは一定期間自宅に住み続けることができるようになりました。
法律上は、「配偶者居住権」があります。
「配偶者居住権」は、残された配偶者が、亡くなった配偶者の所有する建物に住んでいた場合、一定期間(最低6か月)あるいは終身賃料なしで住み続けられる権利です。
この権利は亡くなった配偶者の遺言か、相続人全員の遺産分割協議で設定できます。
「おしどり贈与」で配偶者に自宅の権利を移しておくことで、相続が発生したときに相続の対象となる自宅は、配偶者に「一部所有権がある不動産」になります。
そのため、遺産分割の際に自宅に住み続ける権利を主張できます。
💡ここがポイント💡
2018年の民法改正で「配偶者居住権」が創設され、終身あるいは一定期間自宅に住み続けることができるようになりました。
法律上は、「配偶者居住権」があります。
「配偶者居住権」は、残された配偶者が、亡くなった配偶者の所有する建物に住んでいた場合、一定期間(最低6か月)あるいは終身賃料なしで住み続けられる権利です。
この権利は亡くなった配偶者の遺言か、相続人全員の遺産分割協議で設定できます。
まとめ
私たちが生活をしていく上では、子育て、保険、資産運用、リタイア後など、さまざまな場面で知っておくべき情報や税制・社会保障などの知識があります。
特に住宅取得などの大きなライフイベントは、将来の様々な場面で活用できる知識が多いほど実行可能なプランの選択肢が広がります。
今回のコラムは、その一つとして、夫婦間の居住用不動産の「おしどり贈与」(贈与税の配偶者控除)を利用する際のポイントを紹介しました。
時間を惜しまず色々な情報を集めて、資金計画を検討してみましょう。
特に住宅取得などの大きなライフイベントは、将来の様々な場面で活用できる知識が多いほど実行可能なプランの選択肢が広がります。
今回のコラムは、その一つとして、夫婦間の居住用不動産の「おしどり贈与」(贈与税の配偶者控除)を利用する際のポイントを紹介しました。
時間を惜しまず色々な情報を集めて、資金計画を検討してみましょう。