マイホームの資金計画では、取得した後は生涯そこに住むことを前提に以降のライフプランをイメージします。
一方、ライフプランの変化などでの売却や住み替え、あるいは贈与や相続など様々なケースに遭遇することを想定しておくことも大切なことです。
その際に発生する税金には、負担を少なくできる様々な優遇税制があります。
この情報を事前に知っていれば、マイホームの持ち方についての様々な青写真を考えることが可能になります。
今回のコラムでは、その中からマイホームを売却したときにかかる「不動産譲渡所得税」について、必要な情報を紹介します。
住宅ローンの
マイホームを売却したときの
不動産譲渡所得税
公開日:2024.10.08
- マイホーム売却
- 不動産譲渡所得税
マイホームを売却するケースでの「不動産譲渡所得税」の確定申告
マイホームを売却したケースで、売却収入に「不動産譲渡所得税」がかかる場合、一定の要件に該当する「不動産売却時の控除制度」等を利用して減税をする場合は、「不動産譲渡所得」としての確定申告が必要になります。
「不動産譲渡所得」として確定申告が必要になるケース
「不動産譲渡所得税」は、戸建住宅やマンションなどを売却することで発生した譲渡所得にかかる税金です。
不動産の売却による譲渡所得は個人の所得とみなされるため、「所得税」と「住民税」、2037年までは「復興特別所得税」が課せられます。
税金の種類は「分離課税」といって給与所得や不動産所得などの総合課税とは別に「不動産譲渡所得」だけで税金を計算します。
そのため、不動産の売却によって譲渡所得が発生する場合は確定申告が必要になります。
譲渡所得税の計算方法
「不動産譲渡所得税額」を知るためには、まず譲渡所得を知る必要があります。
譲渡所得は、「譲渡所得= 譲渡価格 -( 取得費 + 譲渡費用)」の計算式で求められます。
■ 譲渡価格 ☞ 不動産を売却した金額
■ 取得費 ☞ 売却した不動産を取得したときに支払った金額
- 不動産の購入金額
- 不動産の購入費用は、“土地代”と“建物代”に分けて計算します。
土地代は購入した金額がそのまま適用されますが、建物代は減価償却費を差し引いた金額になります。
減価償却費とは、固定資産(この場合は建物)の価値の減少を金額に換算した数字です。
- 不動産の購入費用は、“土地代”と“建物代”に分けて計算します。
- 不動産購入時に支払った税金
- 不動産購入時に支払った仲介手数料
- 建築費用
- 設備費用
「不動産譲渡所得税」を計算する際にこれらの「不動産を取得したときに支払った金額」が不明の場合は、売却金額の5%の概算金額が適用されます。
住宅を取得した際は、購入にかかった費用の書類は処分せず大切に保管しておきましょう。
相続や贈与で取得した不動産を売却した場合の取得費は、死亡した人や贈与した人の取得費がそのまま取得した人に引き継がれます。
■ 譲渡費用 ☞ 売却にあたり支払った費用
- 売却時に支払った仲介手数料
- 売買契約書の印紙代
- 売却の際に使った広告費や測量費
- 借家人に支払った立ち退き料
- 家屋を取り壊して土地を売却した際の取り壊し費用
- 司法書士への報酬
不動産の譲渡所得税の計算式
「不動産譲渡所得税」は所有期間によって変わります。
譲渡所得税の計算式は、「譲渡所得税=譲渡所得×税率」で求められますが、税率は所有期間が5年以下か5年超かによって異なります。
所要期間は、不動産を売却した年の「1月1日時点で5年を超えているか」で判断します。
短期譲渡所得と長期譲渡所得、それぞれの税率を見てみましょう。
不動産を譲渡した場合の税率
所得税 | 住民税 | 合計税率 | |
---|---|---|---|
一般の長期譲渡 | 15.315% | 5% | 20.315% |
短期譲渡(譲渡した年の1月1日において所有期間5年以下) | 30.63% | 9% | 39.63% |
※所得税には復興特別所得税=所得税額×2.1%が含まれる
売却した不動産の所有期間が5年を超える「長期譲渡所得」の税率は20.315%ですが、 5年以内の「短期譲渡所得」の税率は39.63%になります。
5年が税率を決める境目となるため、売却を急がない場合は所有期間が5年過ぎてからの売却を検討しましょう。
相続や贈与で取得した不動産を売却した場合の所有期間は、死亡した人や贈与した人の取得の時期がそのまま取得した人に引き継がれます。
「不動産売却時の控除制度」を利用する方法
マイホームを売却する際は、一定の条件を満たしていれば利用できる、譲渡所得からの 控除制度や特例制度があります。
■ 3000万円の特別控除
「3000万円の特別控除」とは、戸建てやマンションなどマイホームの売却時に最大3000万円までの譲渡所得が控除される制度です。
税額は、「(譲渡所得-3000万円)× 税率」という計算式で計算されるため、譲渡所得が3000万円以下の場合は、所得税と住民税が課税されません。
ただし、3000万円の特別控除制度には次のような条件があります。
1. 居住していた住宅の売却であること
不動産の売買契約時に売却をする家屋の登記上の所有者が家屋と敷地を同時に売却した場合で、その家屋に居住している、もしくは住まなくなってから3年以内
2. 過去2年以内にマイホームの3000万円の特別控除の特例・譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例を受けていないこと
3. 過去2年以内にマイホームの買い替えや交換の特例を利用していないこと
4. 売主と買主が親子や夫婦などの関係でないこと
5. 不動産に住まなくなった日から3年を経過する日の属する12月31日までに売却すること
これらの条件を満たす物件であれば、特例を利用して譲渡所得を減額することができます。
ただし、3000万円の特別控除と住宅ローン控除は併用できません。
住宅の買い替えで新たに住宅ローンを利用する場合は、どちらの控除制度を使うほうが節税効果が大きいかの判断が必要になります。
3000万円の特別控除制度を利用して譲渡所得を非課税にする場合は、不動産の譲渡所得の確定申告をする必要があります。
■ 所有期間による軽減税率
所有期間が10年を超えるマイホームを売却した際に利用できるのが、「10年超所有軽減税率」の特例です。
売却した年の1月1日に所有期間が10年を超えていれば、譲渡所得に対して軽減税率が適用されます。
所有期間が10年超ということは長期譲渡所得に分類されるため、譲渡所得に対して20.315%の税率がかかりますが、特例が適用されれば譲渡所得金額の6,000万円以下の部分の税率が低くなります。
不動産を譲渡した場合の税率
所得税 | 住民税 | 合計税率 | ||
---|---|---|---|---|
10年超保有の居住用財産の譲渡 | 6,000万円以下の部分 | 10.21% | 4% | 14.21% |
6,000万円超の部分 | 15.315% | 5% | 20.315% | |
一般の長期譲渡 | 一律 | 15.315% | 5% | 20.315% |
短期譲渡(譲渡した年の1月1日において所有期間5年以下) | 一律 | 30.63% | 9% | 39.63% |
※所得税には復興特別所得税=所得税額×2.1%が含まれる
10年超所有軽減税率は、3000万円の特別控除との併用が可能です。
まとめ
今回のテーマは、マイホームを売却したときの不動産譲渡所得税でした。
ライフプランの変化などでの売却や住み替え、あるいは贈与や相続など様々なケースに遭遇することを想定しておきましょう。